手塚治虫文化賞

第14回マンガ大賞

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物欲で茶の湯に迫る 型破りな織部描く

「へうげもの」 山田芳裕さん(講談社)

「へうげもの」

 主人公は安土桃山時代の武将茶人、古田織部。日本一の数寄者を目指し、名器と引き換えに敵を逃がしたり、縄文土器で茶をたてて師の千利休に「やりすぎ」とたしなめられたり。型破りな人物像は、まさに「へうげもの」(ひょうきん者)だ。

 「日本人大リーガーを主人公にしたマンガを描いていて、『日本人とは?』みたいなことをよく考えた。それで『茶の湯』をマンガにできないかと調べたら、ストイックな求道者の利休より、物欲の塊みたいな織部にひかれた。自分も、物欲を仕事のエネルギーにする人間なので」

 ここぞと力が入るコマで、極端にねじれたポーズや誇張した表情を描く。力強くユーモラスな作風は、織部が好んだゆがんだ茶器の美に通じるように見える。

 「まさに『織部好み』のダイナミックな器に近づきたい。その一心で描いている。織部はエンターテイナー。彼の持っていた器を見ていると、茶席で人を笑わせようとしていたんじゃないかと思う」

 史実に大胆な解釈を加えた。本能寺の変は秀吉と利休の策謀で、利休の介錯は織部が務める。師の最期、その深いもてなしの心に触れ、織部は涙と共に刀を振り下ろす。

©山田芳裕/講談社

 「ひたすらテンションを高めて描いた。終わった時はホッとした心境だったが、すぐさま平常心を取り戻し、次の原稿に向かった」

 大きな山場を越え、物語は後半へ。織部は新たな茶の湯、独自の「美」の創造に挑み、日本の陶芸デザインに一大変革をもたらす。

 「これからが織部の真骨頂。賞を励みに精進を重ね、最後まで描ききる所存です」


《やまだ・よしひろ》

山田芳裕さん山田芳裕さん

 1968年、新潟県生まれ。87年、「大正野郎」でデビュー。2005年から「へうげもの」をモーニング(講談社)に連載中。作品はほかに「デカスロン」「ジャイアント」など。