手塚治虫文化賞

第16回マンガ大賞

第16回 | マンガ大賞 | 新生賞 | 短編賞 | 特別賞 | 贈呈式 | これまでの受賞の記録

古代の英雄 大胆に味付け

「ヒストリエ」 岩明均さん(講談社)

 古代西洋の英雄、アレクサンドロス大王に仕えた実在の書記官エウメネスが主人公だ。相当にマイナーな人物を選んだのは、「いろいろな出来事が周りで起きた人物。そのポジションの面白さです」と話す。

 前半生はほとんど不明な人物を、ギリシャ人の地方有力者の家庭で育つも、じつは騎馬民族スキタイ人だったと設定した。出自ゆえに変転するエウメネスの遍歴を通じて、異なる文化がぶつかり合った地中海世界を鮮やかに描き出す。

 知略で苦難を乗り切り、マケドニアでその地位を確立していくエウメネスだが、どこか冷めて、軽さを漂わせるのが魅力的だ。

©岩明均/講談社

 「異文化の交わりの難しさ、そこでどうすればより良い方向に向かうのか、そんなテーマで描いてますが、エウメネスは正義をふりかざしたり、世界の人々の幸せを願ったりするタイプではない。起こってしまった対立を、とりあえずどんなふうに対処するかなんです」

 代表作「寄生獣」で強烈なインパクトを与えた持ち味の残酷描写は、今作でも顔を出す。最新7巻の、生首を大蛇がのみこむシーンは圧巻だ。少年時代のアレクサンドロス大王も二重人格という大胆な設定で登場し、物語は「だいたい4割ぐらい進んだ」という段階だ。

 成長して東征する大王、その死後のバビロン会議など、史実の行く末は調べれば分かる。でも「決められた枠があれば、予想外なこともやりやすいんですよ」。この先も、様々な驚きをもたらしてくれそうだ。


《いわあき・ひとし》

 1960年、東京都生まれ。85年デビュー。代表作に「寄生獣」「七夕の国」など。「ヒストリエ」は2003年から「アフタヌーン」(講談社)で連載中。