手塚治虫文化賞

第16回新生賞

第16回 | マンガ大賞 | 新生賞 | 短編賞 | 特別賞 | 贈呈式 | これまでの受賞の記録

少年と女戦士 「文字」守る旅

伊藤悠さん 「シュトヘル」(小学館)

 13世紀の中央アジア。チンギス・ハーンとおぼしき「大ハン」率いるモンゴル族が版図を拡大している。大ハンがタングート族の国「西夏」の書物を焼き尽くすことに執念を燃やすなか、大ハンに恭順する部族の少年ユルールは西夏文字に魅了され、その文字盤を守ろうと身内に背く。共に行動するのは、少年の兄に仲間を殺された復讐に燃え、「シュトヘル」(悪霊)と恐れられる西夏の女戦士だ。

 異国情緒あふれる軍装の兵士たちによる壮絶な戦闘シーンをたたみかけるように描きながら、人間にとっての「文字」の意味を問いかける。文字を持たない草原の民のユルールに、「文字は、人を憶えておくために生まれた」と語らせて。

©伊藤悠/小学館

 なぜ文字なのか。「小さいころから、自分はとるに足らない者じゃないかと、悲しかった。でも、消えてしまうのでなく、記録のどこかに残って欲しい、というあこがれがありました」

 原作があった前作「皇国の守護者」で絵の巧みさは知られていたが、今作は初めてのオリジナルの長期連載だ。「始める時はすごく怖かったけど、描きながら考えたことがエピソードになる楽しさを感じてます」


《いとう・ゆう》

伊藤悠さん

 1977年、東京都生まれ。「シュトヘル」を2009年に始め、現在は「月刊!スピリッツ」(小学館)で連載中。