手塚治虫文化賞

第17回手塚治虫文化賞贈呈式

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第17回手塚治虫文化賞贈呈式

第17回手塚治虫文化賞を受賞した(左から)業田良家さん、原泰久さん、山本美希さん

  • ◇日時 2013年5月31日(金)16:00〜17:30
  • ◇会場 東京・築地の浜離宮朝日ホール(朝日新聞東京本社内)
  • ◇主催 朝日新聞社
  • ◇参加無料
〈贈呈式〉
正賞と副賞の贈呈、受賞者のスピーチ
マンガ大賞
『キングダム』(集英社)原泰久さん
新生賞
山本美希さん『Sunny Sunny Ann!』(講談社)
短編賞
『機械仕掛けの愛』(小学館)業田良家さん
〈トークイベント〉
「マンガ大賞受賞記念トーク」
原泰久さん × 永井豪さん(マンガ家・選考委員)、中野晴行さん(マンガ編集者・選考委員)

<3氏に手塚治虫文化賞を贈呈>

 マンガ家の故手塚治虫さんの業績を記念する第17回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式が5月31日、東京・築地の浜離宮朝日ホールであった。

 春秋戦国時代の中国を舞台に、下僕の少年が大将軍を目指す「キングダム」でマンガ大賞に選ばれた原泰久さんに、鉄腕アトムのブロンズ像と副賞200万円が贈られた。原さんは「この作品の主人公は、多くの人物の思いを受け止め、受け継いで成長していく。僕もマンガ家として、手塚先生から受け継ぐ者の一人として、いい作品を描き続けるよう努力していきます」と話した。

 「キングダム」の熱烈なファンという「いきものがかり」の水野良樹さんからお祝いのビデオレターも届き、会場を沸かせた。

 新生賞は「Sunny Sunny Ann!」の山本美希さん、短編賞は業田良家(ごうだよしいえ)さんの「機械仕掛けの愛」。それぞれ鉄腕アトムのブロンズ像と100万円が贈られた。

選考委員のブルボン小林さん

 選考委員でコラムニストのブルボン小林氏は、選考経過報告の中で次のように述べた。「いずれ劣らぬ優れた候補を推す声と反論で膠着状態に陥ったが、『キングダム』の話になると、選考委員はなぜか和やかな雰囲気になる。マンガ自体にチャームというものがあるということだと思う。手塚治虫のマンガは哲学的な点や人間の奥深さを描いて高く評価されているが、どのマンガにも愛嬌がある。新生賞と短編賞においても熾烈な議論が交わされたが、最後はほんのちょっとの愛嬌の差によるものだった。結果的にはすばらしい3作が選ばれたと個人的には思っている」。


<受賞者のことば>


会場に飾られたマンガ大賞『キングダム』のパネル ©原泰久/集英社

■マンガ大賞「キングダム」の原泰久さん

 この度は、身に余る大きな賞をいただきまして、本当に驚いております。当人の僕はもちろんのこと、家族、スタッフ、関係者一同、本当に喜んでおります。選考委員の先生方、本当にありがとうございます。

 「キングダム」は幾つか大きなテーマを込めて描いています。その一つが「受け継ぐ」です。主人公の信は、王騎将軍ほか数多くの偉大な人物から、また、そんなに(位の)上でなくても下の方で頑張っている人物たちから、彼らの生き様と思いを受け取って、受け継いで成長して前に進んでいきます。信も、周りの人間たちへ、次の者たちへと何かを伝えていきます。そのつながりこそが、人の歴史だと思っています。

 今回、マンガの父と呼ばれる手塚先生の名を冠する賞をいただきました。すべてのマンガ家が、手塚先生から直接的に間接的に、世代を超えていろんなものを受け継いできていることは間違いないと思います。そしてぼくもまた、マンガ家の一人です。受け継ぐ者として、これからもいい作品を描き続けるよう努力をしていきたいと思っています。

 これまで一緒に頑張ってきた担当編集の方々、集英社の方々、本当にありがとうございました。献身的に支えてくれる家族、父と母に感謝します。今日この場に、平日にもかかわらず仕事を休んで来てくださった友人や先輩がいます。彼らの存在が、本当に「キングダム」という作品を熱情豊かなものにしてくれました。この場に駆けつけて下さった皆さん、本当にありがとうございました。


■新生賞「Sunny Sunny Ann!」の山本美希さん


新生賞『Sunny Sunny Ann!』のパネル ©山本美希/講談社

 この度はこのような素晴らしい賞をいただき、誠にありがとうございます。大学院生の頃にこの作品の第1話を描いた時は、まだこの作品を世に出せるかどうかも分からず、それがこのような形で評価をしていただけたことをとても驚いていますし、すごくうれしく思っています。家族や先生方や、今までお力添えいただいた多くの方々にお礼を申し上げます。

 当時、自分の進路について悩んでいて、現実の世界でクヨクヨ悩んでいる自分と違った、小さなことには動じない強い女の人が世界のどこかにいるかな、と思ってこういう主人公を描いてみました。

 私はまだ経験も浅く、この先どんな人生を歩いていくか分かりませんが、本日のことを励みにして、自分の人生を切り開いていけるように頑張りたいと思います。


 

■短編賞「機械仕掛けの愛」の業田良家さん


短編賞『機械仕掛けの愛』のパネル ©業田良家/小学館

 名誉ある賞をいただき、誠にうれしく、光栄に存じます。1983年、30年前にデビューして以来、初めて賞というものをいただきました。マンガ界には才能ある方が何百人、何千人もいらっしゃるので、賞をいただくというのはすごく難しいことで、その中で選ばれ、このような立派な賞に選ばれることは本当にありがたいことだと思っています。

 この作品はロボットを主人公にしています。1話二十数ページしかない短編で、「心の美しさ」のようなものを描こうと思ったら、人間でやったら何十ページもかかるけれど、ロボットにしたら短いページで読者の心に強烈な印象を残せるだろうと思いました。いちばん好きなのは「罪と罰の匣(はこ)」という話で、正義感の強いロボット刑事が貧しい人たちのために偽札を造って配って逮捕される、という物語です。実際に世界には、自由な心とか正義感とかを封じ込められロボットのようにされている人たちがいます。そういうことをうまく表現できたのではないかな、と思います。こんな社会的なマンガを描くのは、十代の多感なころにフォークソングがはやって、ボブ・ディランなど社会的なことを歌っている歌をよく聴いていたので、その影響があるのではと思います。

 尊敬する手塚治虫先生のお名前を冠した賞をいただいたことで、手塚先生から直接ほめられ、一人前のマンガ家として認めていただいたような気がしています。そう信じてこれからも頑張っていきたいと思います。私の作品を選んでいただいた審査委員の方々、贈呈式の準備をしていただいた朝日新聞社の方々、贈呈式に駆けつけてくれた先輩や、友人、編集者、仕事の仲間、本日この会場にいらっしゃる皆様に、心から御礼申し上げます。本当に、本当に、ありがとうございました。


<受賞者交えトークイベント>

トークイベントの様子 (左から)永井豪さん、中野晴行さん、原泰久さん

 贈呈式に引き続いて行われたトークイベントでは、2年続けて「キングダム」を推したマンガ編集者の中野晴行さんと、29巻を一気に読んで作品のファンになったという永井豪さんが、作者の原泰久さんを囲んで作品の魅力について語り合った。