手塚治虫文化賞

第17回マンガ大賞

第17回 | マンガ大賞 | 新生賞 | 短編賞 | これまでの受賞の記録

史実+創作 ドラマチックに

「キングダム」(集英社) 原泰久さん

 紀元前、七つの国が覇権を争っていた春秋戦国時代の中国が舞台。下僕の身から武功をあげて出世していく秦国の青年の信や、後に始皇帝となる秦王の政ら若者たちが、乱世を生き抜いて新しい時代に踏み出そうとする息吹が熱く描かれる。

 主なキャラクターは、歴史書「史記」や「戦国策」に書かれた史実が基になっており、おおむねモデルが実在するそうだ。文献の記述は出来る限り忠実に再現しているというが、秦が各国の合従軍に攻め込まれる「函谷関の攻防戦」で描いた各軍の細かい計略などは創作した。

 「ドラマを作り込んで盛り上げる『足し算』。それで時代が進むのが遅くなって、巻数(単行本は現在30巻)が増えちゃってるんですけど」と笑う。

©原泰久/集英社

 すき間の話を考えているときが楽しいという。「バトルを描きたいというより、そこに至るまでの過程や前後の感情の高ぶりが僕はぐっとくる」ので、戦っている最中よりもその直前が好きだとも。戦場で大将が味方の兵にゲキを飛ばす場面のせりふを考えるときは、「自分も入り込んで泣きながら描いている」そうだ。

 秦国六大将軍の一人・王騎をはじめ、顔や姿はみんな個性的。「王騎が出てきたら、副官の騰は負けずに違う方面で興味を引く顔にとか、そのとき描いている世界でのバランスを考えます」。中国人に見えない騰の顔は「悪ノリで始まって、スタッフとフレディ(・マーキュリー)と言っていた」とか。

 そんな遊び心を披露しつつ、信の配下の兵「飛信隊」ができた辺りからは「支え合い、つながりということばかり描いているような気がします」と真剣に語り始めた。チームで臨むと非常に強い力を発揮することを知った社会人時代や、マンガ家の井上雄彦さんのアシスタントを務めた経験が生きている。

 単行本の完結を70〜80巻と見定め、作者自身も中華統一までの創作に突き進んでいる。


《はら・やすひさ》

原泰久さん

 1975年生まれ、佐賀県出身。大学時代からマンガを雑誌に投稿しはじめ、一度はシステムエンジニアとして3年間就職。2006年から週刊ヤングジャンプ(集英社)で連載中の「キングダム」が、連載デビュー作となった。