手塚治虫文化賞

第13回手塚治虫文化賞選考結果

 マンガ文化に大きな足跡を残した手塚治虫の業績を記念する手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の第13回受賞作が決まった。マンガ大賞は、よしながふみさんの「大奥」と辰巳ヨシヒロさんの「劇画漂流」が受賞。新生賞は「パノラマ島綺譚」の丸尾末広さん、短編賞は中村光さんの「聖☆おにいさん」が選ばれた。贈呈式は6月5日、東京の浜離宮朝日小ホールで。各賞に正賞のブロンズ像と副賞100万円が贈られる。

選考経過

 審査対象は08年刊行の作品。最も優れた作品に贈るマンガ大賞は、専門家や書店などによる推薦を参考に、社外選考委員の投票で7作品に絞った。

 最終選考委員会の議論は「大奥」と「劇画漂流」に集中。「大奥」には「SF的な設定の中に、作者の社会的な視点と人物のこまやかな感情描写が高い完成度で両立している」(三浦しをん)、「ジェンダーを入れ替えることで、ありきたりだったドラマの一つ一つが異彩を放つ」(永井豪)など、設定が生む物語の奥行きの深さと鋭く繊細な心理描写に高評価が集まった。

 一方、「劇画漂流」は「劇画」を開拓した作者の自伝的作品であり、「西のトキワ荘物語として読み応えのある青春グラフィティーを追体験できた」(印口崇)、「マンガ史的にはもちろん、終戦から安保闘争までの日本の政治・文化史の重要な記録」(中条省平)、「劇画を生んだ関西のマンガ家たちへの手塚治虫の影響力がよくわかる」(村上知彦)など様々な視点から支持が相次いだ。

 意見を出し合う中、「全くタイプの異なる作品で甲乙つけがたい」との声が高まり、初の2作品受賞となった。

 斬新な表現や画期的なテーマに贈られる新生賞は、圧倒的な技巧と優れた美的感覚を示した丸尾末広で一致した。「原作者の意図を超えるまでに視覚化した傑作で、日本的なマニエリスムの極致」(呉智英)、「既存のものを全く新しく変える力を持つ、質の高い画法」(竹宮惠子)などと評価された。

 短編賞も「聖☆おにいさん」が「笑いの底に敬意がある。専門知識と絶妙なバランス感覚に支えられた、日本でしかあり得ない宗教ギャグ」(藤本由香里)などと高い支持を得た。=敬称略

社外選考委員の方々=敬称略、50音順

  • 印口崇(評論家)
  • 呉智英(評論家)
  • 竹宮惠子(マンガ家、京都精華大マンガ学部長)
  • 中条省平(学習院大教授)
  • 永井豪(マンガ家)
  • 藤本由香里(評論家、明治大准教授)
  • 三浦しをん(作家)
  • 村上知彦(評論家、神戸松蔭女子学院大教授)

1次選考結果(6位まで)

  • (1)海街diary(吉田秋生、小学館)=10点(中条2、藤本4、村上4)
  • (1)大奥(よしながふみ、白泉社)=10点(永井4、藤本2、三浦4)
  • (3)駅から5分(くらもちふさこ、集英社)=9点(中条4、村上5)
  • (4)劇画漂流(辰巳ヨシヒロ、青林工藝舎)=7点(呉2、中条5)
  • (4)マエストロ(さそうあきら、双葉社)=7点(永井3、藤本4)
  • (6)海獣の子供(五十嵐大介、小学館)=6点(呉3、竹宮3)
  • (6)聖☆おにいさん(中村光、講談社)=6点(呉3、竹宮3)