震災・原発報道
津波と火災で壊滅的な被害を受けた岩手県山田町
脱原発を訴えてパレードする人たち=東京都渋谷区
東日本大震災は、朝日新聞社がメディアとしての使命と役割をどう考えるのかという「原点」を確認する機会となりました。読者にとって真に必要な情報とは何なのか、をあらためて考え、それまでの経験が通用しない取材と紙面作りを続けてきた1年でした。
広範な地域を襲った大地震と大津波による甚大な被害を、被災地はもちろん、日本と世界にいち早く伝えることがメディアの基本です。救助も復興もその情報が基本だからです。印刷工場と道路の被害のなかで新聞発行は時間との戦いでした。紙では時間、量ともに限界のあることを意識し、大震災発生直後からデジタル発信、とくにツイッターなど新たな手段も駆使して分刻みでの細かな情報発信に努めました。朝日新聞が収集した情報を紙とデジタルの双方で読者に送ることが総体としてメディアの使命だと考えました。
当初の応援取材の後も、被災3県を中心に30人規模の常駐記者を増員して、復興取材本部を置き、被災地のみなさんと生活をともにすることから見えてくる現実や課題を「被災地日記」の形で連日伝えました。
東京電力福島第一原発4号機の原子炉建屋
東京電力福島原子力発電所の全電源喪失に伴う炉心溶融という過酷な事故は、大量かつ広範囲に放射能をまき散らすというメディアにとっても未曽有の取材対象となりました。朝日新聞社は発生直後から、「パニックが起きるかもしれない」という心配を考慮しながらも、最悪の事態を想定して放射能汚染の可能性を紙面で指摘してきました。背景には「パニックが起きることを恐れて事実を報道しないことは、むしろ読者の利益にならない」という報道姿勢を早期に確認したことがあります。この方針は、地震・津波などの予想報道でも貫いており、今後の重要な紙面方針のひとつです。
一方で、原発事故では取材記者の避難や現場にどこまで近づくかなど報道機関として悩みに悩んだ問題もありました。その結果、「当局の発表に寄りかかった大本営発表」という批判も浴びました。私たちはそうした指摘を乗り越えるため、発表に依存しない調査報道の重要性を改めて確認し、何度でも現場に足を運び、自らの過去の報道も検証する紙面を繰り返し掲載し、現在に至っています。はっきりと分からないことを読者にどう伝えるかもも含め、なお試行錯誤を続けているのも事実です。
大震災が私たちに与えた教訓は、今後の全ての取材・報道に当てはまると考え、読者の皆様の信頼に応えられるメディアとして進化していこうと思います。









