論説

論説は、朝日新聞としての主張である「社説」を書くのが仕事です。
戦後最大の危機をもたらした2011年3月11日の東日本大震災と原発の事故を受けて、朝日新聞は7月13日付朝刊の社説で「原発ゼロ社会」をめざそうと提言しました。
それまで朝日新聞は、安全性を最優先しつつも、大筋では原発を容認してきました。悲惨な原発事故を防げず、しかも地震が活動期に入ったようだという事態を重く受け止め、社論をおおきく転換するものです。
論説の責任者である主幹の論文を1面に掲載して提言の全体像を示したうえで、オピニオン面を1ページ半使って、主張をくわしく展開しました。
社説の見出しを列挙すると、「高リスク炉から順次、廃炉へ」「核燃料サイクルは撤退」「風・光・熱 大きく育てよう」「分散型へ送電網の分離を」。原子力政策を根本的に変え、原発削減への道筋を示すとともに、自然エネルギーを伸ばし、独占の続いてきた電力業界を徹底して自由化する――。日本の原発とエネルギー政策を大転換するよう訴える内容です。
同時に、原発についての戦後の社説を振り返り、原発の危険性に対する洞察が足りなかったという反省も記しました。
社説は、20人ほどの論説委員が平日の昼前から毎日1〜2時間、徹底的に討議したうえで、その議論をふまえて執筆されています。
論説委員は各分野での経験を重ねてきたベテランの記者たちですが、専門外のことについても積極的に疑問を述べ、意見をぶつけ合います。多様な意見を戦わせることにより、一方的でなく深みと説得力のある論を生み出すことができます。それは、世の中で起きるであろう多種多様な議論を先取りすることにもなっています。
国会議事堂が「脱原発」を訴える人たちのオレンジ色のキャンドルで取り囲まれた=2012年3月11日午後6時5分、東京都千代田区、本社ヘリから
「原発ゼロ社会」へ社論を転換するにあたっては、さらに論説以外の編集部門の責任者20人ほどとも議論を重ね、主張の方向や内容を吟味しました。
こうした熟議を経てこそ、自信をもって大胆な主張を展開することができます。
残念ながら、政権交代後の日本の政治は、大震災を受けてからも危機脱出に全力で取り組むことができず、混迷を深めています。
低成長の経済へ移行するなかで少子高齢化が進む。財政赤字を抑えつつ、どうやって社会保障を維持していくか。お隣の中国をはじめ新興国の経済力が急伸する一方で、欧州経済の混乱が続き、国際環境はおおきく変化しています。
こうした大震災以前から抱えている難問にも、震災復興や原発問題といっしょに取り組まなければなりません。
朝日新聞はメディアが多様化するなかで、今後ともこれらの問題に対して、バランスのとれた見解や的確な分析、説得力のある主張・提言を掲載し、読者が考える確かな材料を提供していきます。









