事件取材と報道の手引き

朝日新聞社は2012年、全国の取材網で事件・事故取材にかかわる全ての記者に対して「事件の取材と報道2012」という報道の指針を示した冊子を配布し、同時に社外にも朝日新聞の基本姿勢を知ってもらおうと市販しました。「事件・事故報道は、時代の変化に追いついているか」という問題意識から、本社の社会部事件担当デスクらを中心に1989年に発足した「事件報道小委員会」での議論を礎に編集した冊子です。
事件報道小委は定期的に会議を開き、事件・事故、そして災害も含め日々の取材や記事化の際の問題、改善点を議論しています。「自分たちの周りや社会で何が起きているか知りたい」という市民の関心に応えるという報道の役割の一つが事件・事故報道だと考えているからです。1990年に社内用に「新しい事件報道をめざして」という指針の冊子を作成、配布したのを始めに、2009年まで更新・改訂を繰り返し、市販は2004年版に続き今回が二度目となります。
本格的な改訂、そして市販に踏み切ったのは、ここ数年の間に、裁判員制度の導入や検察審査会の議決による強制起訴制度導入、重大事件の時効廃止・延長など、司法制度が大きく変わったからです。大阪地検検事による証拠改ざん事件、足利事件や布川事件の再審無罪判決などでは、捜査や裁判の過ちが指摘され、刑事司法に対する社会の目も厳しさを増し、こうした社会状況や制度の変化に報道も機敏に対応しなければならないと判断しました。
また、正確な情報をいち早く把握し、社会で共有することが求められる事件・事故報道は、一方で報道内容や取材手法を間違えると重大な報道被害、人権侵害も引き起こします。こうした事態を未然に防ぎ、これまでの貴重な経験や教訓を伝えていくことが重要であり、さらに指針を公開することで、広く報道への理解や信頼を得るきっかけにしたいとも考えました。
1984年の「新しい事件報道をめざして」は約40ページでしたが、東日本大震災報道なども盛り込んだ「事件の取材と報道2012」は約190ページに及びます。そして発刊直後から、事件報道小委は時代の変化に追いつくため、次の改訂に向けての議論を始めています。









