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特集 地球からのメッセージ - [地球異変]

朝日新聞社CSR報告書・会社案内「読者とともに 2011」

地球からのメッセージ

 地球環境問題の現状を政治、経済、科学など多角的な視点から伝えます。企業市民の責任として、自らも取り組みます。


[地球異変]

木々が焼け落ちた後も燃える泥炭地=2007年9月、インドネシア・中部カリマンタン州、小林裕幸撮影

 世界各地で起きている環境の異変を、ルポと写真で伝える大型企画です。2006年の「北極異変」から足かけ5年、世界30カ所以上を、延べ70人を超す記者とカメラマンが駆け回り、200本余の記事を発信してきました。

 06〜08年は、「地球温暖化」が切り口でした。国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が07年11月に「温暖化は確実で、人的要因の可能性がかなり高い」とする第4次報告書をまとめました。企画はそれをまたぐ形で展開し、温暖化によって何が起きているのか。なぜ、対策は? 現場主義、データ主義に徹し、真実に迫りました。

 09年からは「生物多様性」です。10年10月に名古屋で国連地球生きもの会議が開かれるのを前に、現状報告を狙いました。人が持ち込んだ外来種で在来種が追いやられる米五大湖、抗がん剤目当ての盗伐が進む中国雲南省、鉱山開発で川が埋まったパプアニューギニア…。取材データは、写真展や環境教育プロジェクト「地球教室」の素材としても使い、貴重な取材体験を記者が話す機会も増え、幅広い発信につながっています。


本社機「あすか」が活躍したヒマラヤ取材
名大との共同調査で融解が進む氷河の現状が明らかに

大阪本社写真センター次長(元東京本社編集委員)・武田 剛

「30年前のマナスル」30年前のマナスルとツラギ氷河湖(名古屋大学提供) 「マナスル」2007年のマナスルとツラギ氷河湖。30年前と比べると、湖が倍以上の大きさに拡大していた(武田剛撮影)

 高度1万メートル。世界最高峰エベレストの上空を、朝日新聞社機「あすか」が旋回する。眼下には氷の融解でやせ細るクンブ氷河。「山が死んだように黒い」と、同乗の雪氷学者がため息をもらす。

 西へ進路を変え、ネパール中部の高峰マナスルへ。山頂から延びるツラギ氷河に目をやると、その末端に氷が解けてできた氷河湖が見える。

 機体を左に傾け、30年前の空撮写真と同じアングルを探す。古い白黒写真を片手に、撮影窓を見つめる。やがて山の陰から湖が姿を現した瞬間、「その時」が来た。

 夢中でシャッターを切り、慌てて写真を再生する。機内は驚きの声に包まれた。昔の写真に比べ、湖がなんと倍以上に拡大していたのだ。

 ヒマラヤで今、この氷河湖が問題になっている。温暖化で湖の拡大が続き、決壊による大洪水で、多数の犠牲者が出る危険が高まっているのだ。

 2007年秋、ヒマラヤの民に迫る危機を伝えようと、私たちは名古屋大学と協力して、ネパールの現地調査に赴いた。名大は1970年代にヒマラヤ中の氷河を空撮しており、その数は1万枚にも及ぶ。30年後の姿を撮って比べることで、融解が進む氷河の現状を明らかにした。

 小型ジェット機の「あすか」は10人乗りで、高度1万3千メートルまで上昇できる。この機体に名大の研究者を乗せて、10日間ヒマラヤを縦横無尽に飛び、貴重な記録を集めた。

 本社機による科学調査支援の歴史は古い。1956年の第1次南極観測隊には、小型機とヘリコプターの2機を派遣し、偵察や人員輸送に協力。この「地球異変」でも、北海道大学や国立環境研究所と共同で、米アラスカ州の森林火災や沖縄のサンゴ調査もしている。

 取材だけでなく、少しでも科学調査の役に立ちたい。そんな思いを引き継ぎ、環境取材の企画を考えている。

    *

 武田剛(たけだ・つよし) 1992年朝日新聞入社。富山支局、東京本社写真部、編集委員などを経て大阪本社写真センター次長。2003年末から1年4カ月間、45次南極観測隊に同行して越冬取材。帰国後、地球温暖化をテーマに環境取材を始め、2006年グリーンランド、2007年ネパールヒマラヤ、2008年に北極圏カナダ、2009年アフリカ・チャド湖を取材。2001年から2002年には内戦終結後のアフガニスタン、2003年にイラク戦争を取材。著書に「南極 国境のない大陸」(朝日新聞社)、「ぼくの南極生活500日」(フレーベル館)など。2010年には、北極取材をまとめた児童書「地球最北に生きる日本人」(同)で第57回産経児童出版文化賞を受賞。