どくしょ応援団

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2005年度のレポート [小学校編]

堺市立上野芝小(大阪)
講師:谷川俊太郎さん
講師プロフィール

授業風景

 「今日は、40人で1行ずつ出し合って40行の詩を作ります。テーマはコップ」

 そう言いながら、詩人、谷川俊太郎さんは、教卓の上のコップを取り上げた。大阪府堺市立上野芝小学校(中島孝子校長、児童数497人)の5年1組40人(担任・三渕玲子先生)は、意外な「出題」に、戸惑いの表情だ。

 「自分の気持ちを書くのではなくて、言葉を探すんだよ。たとえば、こうやってみたら、どう?」
と、谷川さんはコップを横にしたり縦にしたり。「めちゃくちゃだっていいよ。コップに対して怒ってもいいし、コップを好きになってもいい」

 みんな考え込んで、教室はしばらく静まる。やがて谷川さんにうながされ、各自が考えた1行の発表だ。

 トップバッターは「コップはなぜガラスでできているの?」。「何だか教科書みたいだね、もっと調子よく」と谷川さんがずばりアドバイス。二番手は「コップはとってもすばらしいもの」。「どうしてすばらしいのかな。そこを書いたほうが面白いね」。これも出直し。やがて「コップ、いま水がはいっている」という声に、谷川さんが「この1行、もらっておくね」。三渕先生が黒板に書きとめる。

 ようやく感じがつかめた。「あったかいものいれても、冷たいものいれてもがまんする」。「いいですね!」と谷川さん。「お茶をいれたら茶色になる」には「を」と「になる」を取って「ミルクいれたら白」と付け足す。ちゃんと詩らしくなった。「文章を短くすると調子がよくなるんだよ」

 どんどん手が挙がる。「水をいれたらすきとおる」「いろんな口へ運ばれる」「おれプラスチック」「せっ者ステンレス」……。のってきたところで授業が終わってしまった。子どもたちは詩を完成させて、後日、谷川さんに届けた。

「コップ」(一部を抜粋)
 お茶いれたら茶色 ミルクいれたら白
 水をいれたらすきとおる
 いろんな口へ運ばれる
 何もはいっていないや さみしいな
 やっとデカが買ってくれた がんばるぞ
 ぼくガラス おれプラスチック
 うち紙 おいら土 せっ者ステンレス
 わたしはスプーンのお家(うち)です
 チャピチャピ ジョボジョボ

谷川さん

「普段から言葉遊びをすると、もっと言葉の感覚が身につくよ」

(文・十文字みなみ/写真・熊谷武二)
(朝日新聞朝刊掲載2005/12/19)