
- 福山市立旭小(広島)
- 講師:甲野善紀さん
- 講師プロフィール

「無理じゃろう、それは!」。広島県福山市立旭小学校(廣澤芳子校長、287人)の体育館に、6年生A組、B組合わせて47人の声が響いた。床に敷かれたマットに張りつくのはA組担任の安原伸家先生。ラグビー歴のある筋力自慢の安原先生を、武術研究者の甲野善紀さんが一瞬で仰向けにしてみせるというのだ。
みんなが見守る中、甲野さんは腰を落とし、先生の肩口とももの下に腕を差し込む。と、次の瞬間、安原先生は持ち上げられひっくりかえされて、「うわあっ」と声をあげていた。
「すごいっ!」。子どもたちは興奮して甲野さんを取り囲み、「自分より大きい人を倒す方法がありますか」「速く走れるようになるには?」「サッカーのフリーキックを決めたい」と質問の嵐。


甲野さんは実際の動きで答えた。まず「誰か私の胸を突いてごらん」。我こそはという男子が試みるが、ぱっと後ろに逃げられて触ることもできない。2度目の攻撃もあっさりかわされた。「甲野さん、めちゃ速いで!」
「理由がわかる? 多くの人は床をけって逃げる準備をしてから逃げるので遅いんだ。でも後ろに倒れかかる働きを使えば、準備をする時間を節約できるので速いんだよ」
一枚歯のげたを履いて楽々とジャンプして見せて、「速く走りたいとかキックが上手になりたいとかなら、こういうげたを履いて、足元の悪い場所でも飛び回れるようになれば、驚くほど動けるよ」。
寝ている人を楽に起こす甲野さん考案の古武術介護は、みんなで練習。友だち相手にすぐにコツをつかみ、校長先生を起こせるまでになった。
「日常生活の中には、理科や算数、歴史につながるものがたくさんある。体を使って考えてごらん」と、甲野さんは授業を終えた。

授業を受けた岡田麻衣さん
「寝ていたのを起こされたとき、力を感じなかった。魔法みたいでした」
B組担任の深渡瀬聖子先生
「甲野先生の身体の使い方に、子どもたちは魅了されていました」
(文・安里麻理子 写真・白谷達也)
(朝日新聞朝刊掲載2008/01/31)
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