どくしょ応援団

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2009年度のレポート [小学校編]

一宮市立浅井中小(愛知)

講師:原ゆたかさん

講師プロフィール

授業風景

 丸いメガネの児童文学作家・原ゆたかさんは、教室を見渡しながら尋ねた。「リレー小説を書くの、面白い?」。浅井中(あざいなか)小6年2組では、子どもたちが4月から、ひとつのお話を原稿用紙に書き継いでいる。謎の人物「かいとうクロオ」とクラス全員が闘う物語だ。原さんの質問に子どもたちは一斉に「はいっ」。元気な声が響いた。

 そのリレー小説を取り上げて、わくわくするお話の書き方について考えよう、というのがこの日の授業の狙いだ。

 原さんが、用意してきた「マル秘とらのまき」を配る。輪郭や目、耳など顔のパーツが20種類ずつ表になっているイラスト集だ。「私はお話を書く前に、キャラクターを描かないと気持ちが入らないんだ。みんなもクロオの顔を考えてみて」。子どもたちはさっそく「とらのまき」をじっと見ながら、思い思いのクロオの顔を描いてゆく。お互いに見せ合っては「えー可愛い過ぎない?」「マヌケそうだねぇ」と、大騒ぎだ。

授業風景
授業風景
授業風景

 しっかり主人公をイメージできたところで、次。「お話作りで大事なのは、『引き』と『ツッコミ』だよ」と原さん。「引き」とは、話が区切れるところで「すると」「ところが」などと気を持たせて、早くその先を読みたいと思わせる工夫。「みんなのリレー小説でも、ちゃんと使っているね。でも、1ページに2回以上は多すぎ」

 「ツッコミ」は、ほかの人が書いた部分を読んで、それ以前に出てきた説明と食い違っているとか、おかしなところがあったら、「なんでやねん」と指摘してあげること。「書いた人がそこを直すと、もっと面白くなるよ」

 原さん自身「ツッコミ魔」だったそうだ。もともと、ほかの人が作ったお話に絵をつけるのが仕事だったのが、絵を描く立場から「お話のここがヘン、とツッコんでばかりいたら、『だったら自分で書けば』と出版社の人に言われて。それでゾロリを書くことになったんだ」。目を輝かせて聴き入る子どもたち。

 2時間目は、子どもたちの将来の夢について話し合った。原さんは「本やアニメを作っているのはみんな、好きなことをあきらめないで続けてきた人たち。興味があったらまずやってみて、楽しいと思った気持ちを忘れないで」と結んで、授業を終えた。

 ●愛知県一宮市、全校422人、音頭晴政校長。6年2組は33人。担任は戸松千裕先生。

集合写真

クロオの生みの親、畑中良夢(らむ)さん

「いい名前をつけたってほめられてうれしかった。クロオはお話を面白くしようと思って作ったんだけど、結構活躍していてびっくり」

苅谷幸寿(ゆきひさ)くん

「原先生はゾロリみたいな人かなと思ったら、まじめにいろいろ教えてくれた。お話を作るのって大変なんだなあ」

原さん

「事前に子どもたちのリレー小説を読んだら、子どもらしい発想も、やや引っ掛かる点もあった。だったら、お話を作る大変さやポイントを、少し突っ込んだ形で話そうと思いました。よく聞いてくれましたね」

(文・田中有 写真・吉永考宏)
(朝日新聞朝刊掲載2009/12/12)