どくしょ応援団

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2010年度のレポート [小学校編]

喜界町立志戸桶小(鹿児島)

講師:岩井俊雄さん

講師プロフィール

授業風景

 志戸桶小は、鹿児島市から南に約400キロ、奄美大島の東に浮かぶ喜界島(きかいじま)にある。訪れたメディアアーティストで絵本作家の岩井俊雄さんは、みんなに大きな声で呼びかけた。「海の中に100階建ての家があったら、どんな生き物を住人にする!?」「タコ!」「イルカ!」「フグ!」。たちまち元気な答えが返ってきた。

 岩井さんには地上と地下を舞台にした、2冊の「100かいだてのいえ」の絵本がある。そこでこの日、島の子どもたちと一緒に作るのは「うみのなかの100かいだてのいえ 喜界島編」だ。

 「これが出てきたら面白いだろうな――そういう生き物だと絵にしやすいよ」と、岩井さん。するとあちこちから「ウツボ!」という声が。「えっ、ウツボってそんなに人気なの」。驚く岩井さんに「釣りに行くとよく引っかかるよ」と子どもたち。

授業風景
授業風景
授業風景

 ほかにもヤコウガイやクマノミなど、南の島ならではの生き物が次々と候補にあがり、みんなワクワク。あれがいい、これが面白いと話し合った末に、上から下へ10階ごとに、トビウオ、タコ、ウミガメ、ウツボ、サメ、フグ、ヒトデ、タツノオトシゴ、マンボウ、チョウチンアンコウの10種類が「うみのなかの100かいだてのいえ」の住人に決まった。

 志戸桶小の全校児童はちょうど50人。ひとりが2階分ずつ、約1時間かけて、思い思いに「住人たち」の暮らしぶりを描いた。できあがった力作を体育館の床に並べると、ぴったり100階建てに。そこでお楽しみ上映会がスタート。海面近くの1階から深海の100階までを、ビデオカメラがスクリーンに映し出していった。

 「ウツボに食べられそうな岩井さん」を描いて爆笑をさそったのは、3年の榮健生(さかえけんせい)くん。5年の富田春佳さんはタツノオトシゴに島の名産サトウキビを収穫させた。最深の100階にいたのは、チョウチンアンコウではなくて、なんとクジラ! 「100かいだてのいえ」の住民たちを高々と吹き上げていた。6年の森真由美さんのアイデアだ。大笑いのうちに、大満足の上映会が終わった。

 ●鹿児島県大島郡、全校50人、馬場善和校長。授業には全学年が参加。担当は田島裕三先生。

集合写真

池田乃愛(のあ)さん(5年)

「ソファでくつろぐヒトデを描いたら疲れたサラリーマン風になって、それを岩井さんが面白がってくれてよかったです」

中山海士(かいと)くん(2年)

「タコのレストランを描きました。難しいと思ったけど、タコがご飯食べてるとこ考えたらすぐ描けた」

岩井さん

「これまで僕の中には“絵本は子どもたちへの贈りもの”みたいな気分があったけれど、実はパワーをもらっていたのは僕の方。それが分かって胸がいっぱいになりました」

(文・安里麻理子 写真・白谷達也)
(朝日新聞朝刊掲載2011/2/12)