
- 福島県立葵高
- 講師:あさのあつこさん
- 講師プロフィール
ピンクや黄色やオレンジ色、色とりどりのバラが6本、六つの花瓶にさしてある。福島県立葵高(佐治和則校長、生徒957人)の教室。1〜3年の図書委員 33人(担当・渡部一男先生)が作家、あさのあつこさんの授業にのぞんだ。「皆さん、書くことに抵抗はないですよね?」と、確かめるように尋ねるあさのさん。今日のテーマは「バラを書くこと」だ。 六つの班に分かれた生徒たちが、それぞれに好みのバラを机の真ん中に置く。
「皆さんが不幸のどん底にいるとします。その時にいま選んでもらったバラが、どういう風に見えるか、それを書いてみて」。「哀(かな)しみのなかのバラ」を書くのだ。「ぬれたバラがよければ、霧吹きで水滴をつけてみて」
それぞれ集中して書くこと約30分。「では、各班で読み合って作品をひとつ選び、皆の前で読み上げてもらいます」とあさのさんが言うと、驚きのざわめきが。それでもにぎやかに話し合いが始まった。なかにはジャンケンで代表者を決める班も。
「ピンク色のバラは、暗い孤島で、ひとつだけ光っている。憎くなって花びらを燃やしてしまおうと思い、線香を取りに立ち上がる」
2年生女子の力作だ。「女の心の情念がちゃんとかけていますね」とあさのさん。「生きる力のない私と対照的な、鮮やかな黄色いバラ」や「妻を殺した男がふと目にとめた夕焼け色のバラ」も登場した。
「みんな、なかなか人生が深い」とあさのさん、感心しつつ、課題その2を出してくる。「次は、喜びをテーマにバラを書きましょう」
そしてまた発表。「テストがなんと校内で1位だったのだ」と男生徒が読み始めるとみんな大笑い。「結婚する私」の前に彼が現れて「私の視界が突然黄色に染まった」という女生徒の作品。彼から黄色いバラを受け取ったのだ。
「夕焼けの風景ひとつをとっても、“太陽が光を失っていく”と書けば哀しさが表現できるし、“明日の晴れを約束してくれる空”と書けばうれしい感じが出ますね」とあさのさん。ものは鏡のように心を映し出すことを教わった授業だった。

授業を受けた栗田志穂さん
「作品の雰囲気から、お母さんみたいな人かと思っていましたが、面白くて気さくな方で、とても楽しかったです」
(文・古川雅子/写真・御堂義乗)
(朝日新聞朝刊掲載2006/2/17)
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