どくしょ応援団

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2006年度のレポート [中・高校編]

福島県立安積黎明高(福島)
講師:俵万智さん
講師プロフィール

授業風景

「31文字の短歌を不自由と思わないで。詠み手の心を千年後にも伝えるタイムカプセルだから」。福島県立安積黎明高校(佐藤彦一校長、1076人)2年2組(担任・加藤尚実先生)の38人に、歌人、俵万智さんがこう語りかけて、授業は始まった。教材は「恋」と「修学旅行」をテーマに全員が詠んでおいた歌。

出だしは「あなたとは なんでも話せる 仲なのに ただ言えないのは 『好き』の一言」と「君と話す ただそれだけで 精一杯 なのに君に『好き』 って言えるかっ」の2首。「まるで相聞歌のようね」と俵さん。当の詠み手2人は「全くの偶然です」と、どぎまぎする。

授業風景
授業風景
授業風景

「愛してる まじ愛してる 愛してる まじ愛してる 超愛してる」の歌には、「『超』で駄目押ししたのがすてき」。「かわいい」とみんなを沸かせたのが「恋って何? ナニそれソレは おいしいの? とぼけたりして 忘れたいだけ」。

「俵さんの歌は実体験から生まれるんですか?」とずばりの質問が出る。俵さんは代表歌「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」を口ずさみ、「味をほめられたのはサラダではなく、本当はから揚げなの」。生徒たちは大爆笑。「ごちそうでなくてもおいしく感じさせるのが恋の力。短歌では狄瓦遼榲瓩鯏舛┐襪燭瓩劉犖斥佞留貝瓩許されます」

 後半は、修学旅行の歌。「また来よう 風車と花と テディベア 大事な人と できれば君と」など、恋をからめた作品が多い。

突然、俵さんが思い出を語り始める。「大好きだった先輩に修学旅行先からせっせと絵はがきを出したなぁ。なのに、旅から戻った途端にふられて、旅の終わりに出したはがきは、失恋後に相手に届いたりしてて……」。シーンと聴き入る生徒たち。「恋はがんばってもうまくいくとは限らないよね。勉強とは違う。でもお陰で、世の中には色々な物差しがあることを知りました。短歌は、私にとって〈人生の表現〉。皆さんにも人生を表現する方法との出会いが必ずありますよ」

集合写真

授業を受けた中山大希君

「照れ隠しで面白おかしく詠んだ恋の歌だったのに、好評でうれしかった」

柳沼亜紀さん

「詠んだ歌が予想外に解釈されて面白かったです」

加藤先生

「俵さんの言葉が生徒たちに染み込んでいくような90分でした。とても貴重な経験でした」

(文・岡澤香寿美/写真・御堂義乗)
(朝日新聞朝刊掲載2006/12/06)