どくしょ応援団

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2006年度のレポート [中・高校編]

福岡県立太宰府高(福岡)
講師:谷川俊太郎さん
講師プロフィール

授業風景

「芸術に大切なことは何だと思いますか?」

詩人の谷川俊太郎さんにいきなり難題が飛んだ。福岡県立太宰府高校(宮崎哲校長、997人)3年9組芸術科(担任・松本了一先生)の38人が興味深く答えを待つ。「出来るだけ対話形式でやりたい」という谷川さんの希望で、授業は質疑応答から始まったのだ。

「ひと言で言うと、<美の規範>を持つこと。古典を学び、自分自身の<美の規範>を持つのがいいと思います。こっとう屋の主人が小僧に一番始めに何を教えるか。まず、徹底的に一流のものを見せるそうです」

質問した油彩専攻の男子生徒に「将来は?」と谷川さんが聞く。答えは「芸術で身を立てたい」だった。

話は現代芸術の未来へ。「作品の良しあしを置いて、流通商品としてすごい値段で扱われるのは、一種、退廃のような感じ」と谷川さん。

次は、金属工芸専攻の女子生徒。「人生において、一番大切なことは何ですか?」。谷川さんが逆に聞き返す。「皆さんの答えを聞いてみたいです。手を挙げて」。指された女子生徒は「LOVE、愛です」。「全くその通り。最初の一人で答えが出ちゃいました」と谷川さん。どっと笑いが起こる。

ひとしきり質疑応答が続いた後、谷川さんがスライドを見せながら朗々と詩を読んだ。絵本の「もこ もこもこ」では、地面が盛り上がってくる画像に合わせ「もこもこもこ………」。「もこ」や「にょき」といった擬音だけの詩に、生徒たちが思わず笑い出した。

授業風景
授業風景
授業風景
授業風景

「僕はノンセンスなものがとても大切だと思っているんです。今の人間は意味にとらわれすぎている」

さらに17歳の時に作った詩「絵」や、オランダの画家、ヨハネス・フェルメールに触発されて書いた「灰についての私見」などの詩を朗読し、再び質問に。

染色専攻の女子生徒「インスピレーションがわく瞬間はありますか」

谷川さん「あります。日本語という豊かな畑に植物みたいに根を下ろして、自分を空っぽにして待ってると、水を吸い上げるようにして、言葉が出てくる」

答え終えた谷川さんを長く熱い拍手が包んだ。

 「絵」
 わたれぬような河のむこうに
 のぼれぬような山があった

 山のむこうは海のような
 海のむこうは街のような

 雲はくらく――
 空想が罪だろうか

 白いがくぶちの中に
 そんな絵がある

集合写真

授業を受けた窪田基幸君

「<ノンセンス>が大切という言葉に共感しました」

緒方さやかさん

「谷川さんの世界観は広いなあと思いました。質疑でも、答えの予想がつかなかった」

国語担当の長野由佳先生

「生徒たちにとてもいい刺激をいただきました」

(文・十文字みなみ/写真・馬場磨貴)
(朝日新聞朝刊掲載2007/02/17)