どくしょ応援団

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2007年度のレポート [中・高校編]

シュタイナー学園中等部(神奈川)
講師:井上ひさしさん
講師プロフィール

授業風景

もし、自分たちの学校が日本から独立したら――。

「みなさんもどうですか? できるんですよ」と、生徒たちの意表をついたのは、作家・劇作家の井上ひさしさん。私立シュタイナー学園(秦理絵子校長、185人)中等部の9年生(12人、担任・山岸寿子先生)に、NPO法人藤野シュタイナー高等学園の生徒たちが加わった36人は「まさか!」の表情だ。

だが相手は、東北のある地域が日本からの独立を目指す小説『吉里吉里人』の作者。「30カ国くらいから承認を取り付ければ、立派な独立共和国です」。分かりやすく独立のプロセス、必要な手続きを説明。そのなかで憲法について語ってゆく。

授業風景
授業風景
授業風景

「人には、国から独立する自由もあれば、ケンカする自由もあります。でも、殴り合いや殺し合いの自由まで認めるのでは困る。だからこそ、人々が安心して暮らせるように、国は大きなルールを決めておく。それが憲法です」

井上さんはポケットから赤い手帳のような小冊子を取り出した。「日本国憲法」だ。

「国民主権、基本的人権の尊重、戦争の放棄。これが日本国憲法の柱になっています。その1本でも欠ければ、憲法は憲法でなくなると思うんです。読んでみますね」。井上さんの朗読する憲法前文に、じっと耳を傾ける生徒たち。

読み終えた井上さんは、「戦争の放棄」について、その成り立ちの背景を語った。

1928年、世界で初めて不戦条約が結ばれた。戦争を放棄し、紛争の平和的解決を宣言した〈ケロッグ・ブリアン条約〉だ。日本も含めて当初15カ国が調印している。日本国憲法が公布される18年も前の話だ。そしてそれ以前にも、戦争回避論を唱えた人はたくさんいたという。日本にも世界にも、それこそ、古代ギリシャから。

「大人は子どもにはケンカをしてはいけないなどといいながら、外国とは戦争という名のケンカをしている。いけませんね」などと、生徒たちを笑わせつつ、ユーモアたっぷりで行われた井上版憲法講義だった。

集合写真

授業を受けた熊埜御堂真凜(くまのみどう・まり)さん

「憲法改正問題がニュースになる理由がよく分かりました」

(文・安里麻理子 写真・白谷達也)
(朝日新聞朝刊掲載2008/02/16)