
- 滋賀県立河瀬中学校
講師:海堂尊さん
- 講師プロフィール

海堂尊さんの小説が原作の映画「チーム・バチスタの栄光」を全員で鑑賞し、それぞれ好きな作品も読破したという1年1組。歓声で迎えられた医師で作家の海堂さんは、うれしそうな表情を浮かべたまま、こんな一言を発した。
「突然ですが、最初にテストをします」
歓声は一変、「えーっ!」という驚きの声に。間髪入れず、人間の上半身の輪郭を描いたプリントが配られた。「この空っぽの体の中に、内臓を描き込んでもらいます」
まず、みんなが知っている内臓の名前を挙げていった。心臓、肝臓、肺に続き、胆嚢、膵臓と中学生には少し難解な名も挙がる。海堂さんはどんどん板書していく。「側頭葉も臓器ですか?」と、さらに専門的な質問も飛び出した。
「じゃあ、いま挙げた内臓をプリントに描き込んでみよう」。生徒たちが一斉にプリントに向かう。すらすら鉛筆を走らせる人もいれば、考え込んでなかなか手が動かない人も。5分後、プリントが集められ、解説が始まった。


「人間の体は、口からお尻の穴まで中心が空洞になっている『ちくわ』のような構造です。そのちくわの周りにある臓器を消化器と呼びます」。口、食道、胃、十二指腸、そして小腸、大腸へと、板書した名前に海堂さんは次々と番号を振っていく。
「内臓をバラバラに覚えるのは難しい。だけど、たとえば『食べ物を消化する』という機能に沿って順番に並べると、イメージができ、理解につながる。情報を分類し、整理することが、物事を考えるときには重要なのです」
これが、今回の海堂さんの授業のポイントだった。「断片的な知識がつながったときに、初めてイメージができる。身近な存在である内臓を例にとり、系統立てて覚えることで、知識の体系化を体感し、身につけてほしかった」
教室では、さらにしっかりと内臓をイメージする「秘策」を伝授した。キーとなるのは「横隔膜」だ。
「あばら骨の下あたりにある膜で、医学的にもこの上が胸、下がおなかと定義されている。横隔膜の上には食道、心臓、肺が、下には胃から先の内臓があります。
これを基準にすると、内臓の位置をしっかりイメージできます」
授業の最後は、再び人体図のプリントが配られ、内臓描きに挑戦。ほとんどの生徒が真っ先に胸とおなかの間に横線を引き、正しい位置に内臓を描き込んでいた。

田中魁秀くん
「内臓ってあまり意識したことがなく、目立たない存在と思っていたけど、実はすごく大切なんだとイメージが変わりました」
岩橋麻梨亜さん
「内臓のある場所を初めて正しく知りました。海堂先生の話を聞いているうちに、質問したいことがどんどんわき起こってきました」
(文・中津海麻子 写真・熊谷 武二)
(朝日新聞朝刊掲載2008/10/30)
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