どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

オーサー・ビジット

2008年度のレポート [中・高校編]

滋賀県立河瀬中学校

講師:海堂尊さん

講師プロフィール

授業風景

 海堂尊さんの小説が原作の映画「チーム・バチスタの栄光」を全員で鑑賞し、それぞれ好きな作品も読破したという1年1組。歓声で迎えられた医師で作家の海堂さんは、うれしそうな表情を浮かべたまま、こんな一言を発した。

 「突然ですが、最初にテストをします」

 歓声は一変、「えーっ!」という驚きの声に。間髪入れず、人間の上半身の輪郭を描いたプリントが配られた。「この空っぽの体の中に、内臓を描き込んでもらいます」

 まず、みんなが知っている内臓の名前を挙げていった。心臓、肝臓、肺に続き、胆嚢、膵臓と中学生には少し難解な名も挙がる。海堂さんはどんどん板書していく。「側頭葉も臓器ですか?」と、さらに専門的な質問も飛び出した。

 「じゃあ、いま挙げた内臓をプリントに描き込んでみよう」。生徒たちが一斉にプリントに向かう。すらすら鉛筆を走らせる人もいれば、考え込んでなかなか手が動かない人も。5分後、プリントが集められ、解説が始まった。

授業風景
授業風景
授業風景

 「人間の体は、口からお尻の穴まで中心が空洞になっている『ちくわ』のような構造です。そのちくわの周りにある臓器を消化器と呼びます」。口、食道、胃、十二指腸、そして小腸、大腸へと、板書した名前に海堂さんは次々と番号を振っていく。

 「内臓をバラバラに覚えるのは難しい。だけど、たとえば『食べ物を消化する』という機能に沿って順番に並べると、イメージができ、理解につながる。情報を分類し、整理することが、物事を考えるときには重要なのです」

 これが、今回の海堂さんの授業のポイントだった。「断片的な知識がつながったときに、初めてイメージができる。身近な存在である内臓を例にとり、系統立てて覚えることで、知識の体系化を体感し、身につけてほしかった」

 教室では、さらにしっかりと内臓をイメージする「秘策」を伝授した。キーとなるのは「横隔膜」だ。

 「あばら骨の下あたりにある膜で、医学的にもこの上が胸、下がおなかと定義されている。横隔膜の上には食道、心臓、肺が、下には胃から先の内臓があります。

これを基準にすると、内臓の位置をしっかりイメージできます」

 授業の最後は、再び人体図のプリントが配られ、内臓描きに挑戦。ほとんどの生徒が真っ先に胸とおなかの間に横線を引き、正しい位置に内臓を描き込んでいた。

集合写真

田中魁秀くん

「内臓ってあまり意識したことがなく、目立たない存在と思っていたけど、実はすごく大切なんだとイメージが変わりました」

岩橋麻梨亜さん

「内臓のある場所を初めて正しく知りました。海堂先生の話を聞いているうちに、質問したいことがどんどんわき起こってきました」

(文・中津海麻子 写真・熊谷 武二)
(朝日新聞朝刊掲載2008/10/30)