どくしょ応援団

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2010年度のレポート [中・高校編]

KTC中央高等学院 浜松キャンパス(静岡)

講師:綿矢りささん

講師プロフィール

授業風景

 あらすじとシーンの違いは何だろう? 作家の綿矢りささんが問いかけると、緊張に固まった教室が一転、活発な話し合いの場となった。

 あらかじめ綿矢さんから出された宿題は「小説を書いてみよう」。提出作品のほとんどが生徒たちの〈第一作〉だった。「死に神の少女が死にたがっている少年を救う話、砂糖の気持ちになって書いた話など実にいろんな物語があり、どれも完結していた」と綿矢さん。「創作の第1関門はクリアした」とした上で、冒頭の質問を投げかけた。

 「細かな情景描写なしに、事実を淡々と書くのがあらすじ」「あらすじは客観的な視点から書き、シーンは主観で書く」「シーンには会話文や擬音が入っていて、状況を想像しやすい」など、生徒たちからさまざまな意見が出るたびに綿矢さんは大きくうなずく。この「あらすじとシーンの違い」を意識することこそ小説作法の基本なのだ。

 みんなの作品にはあらすじのみのものも多く見られ、綿矢さんは惜しいと思った。「読者に感情移入してもらうためには、物語に流れている1秒1秒を描くことも大事。物語に肉付けをする、それがシーンです」

授業風景
授業風景

 シーンをうまく書くにはマンガのノベライズ(小説化)が練習になるかも、と考えた綿矢さんは素材としてマンガ『さようなら、ドラえもん』を用意した。未来へ帰るドラえもんを安心させるため、独り立ちしようとするのび太を描いた作品だ。自作見本を示しながら最後の7コマを小説にしようと呼びかけた。

 書けたら綿矢さんに読んでもらおう! しばし教室にはペンの音だけが響く。中には金山鈴さんのように、「平気そうな顔をしているのび太だが、目は真っ赤で、泣いた後ということがわかった」と、原作にないオリジナル描写を盛り込んだ生徒も。綿矢さんは一人ひとりに、「のび太の強がる感情がうまく書けてる」などと声をかけるが、あえなく時間切れ。「今回チャレンジした創作を面白いと思ったら、ぜひ、小説家を未来の選択に加えてください」。授業を結んだ綿矢さんの前には、アドバイスを求める長い列ができた。

 ●静岡県浜松市、全校260人、通信制高校のサポート校。伊津野滋民キャンパス長代理。担当は三森加奈子先生。有志29人が参加。

集合写真

鈴木美乃莉さん

「初めて小説を書いたので、家族や友人の反応が一番よかった作品を提出しました。綿矢さんの講評がうれしかった」

鈴木公大くん

「変わった文体だけどスラスラ読める、そんな小説を書く綿矢さんに興味があったし、授業は新しい経験になりました」

綿矢さん

「宿題はどれも個性的で、どんな人が書いたんだろう?と想像するのも楽しく、実際に作者たちと会えてうれしかった! 実習では、同じ書き手でも創作とノベライズで印象が変わるのが面白かった」

(文・安里麻理子 写真・吉永考宏)
(朝日新聞朝刊掲載2010/12/12)