どくしょ応援団

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2011年度のレポート [中・高校編]

宮城県古川工業高

講師:安藤忠雄さん

講師プロフィール

授業風景

 95人の生徒たちの机に、95個の建築模型が並んだ! ドーム形、ロフト付き、はしごだらけの3階建て……。建築家の安藤忠雄さんが「自分の理想の部屋」のテーマで出した課題だ。

 「どれも、よくできているね」と、感心しながら安藤さんが見て回る。みんな緊張でガチガチだ。すぐさま「あかん、あかん。我こそは一番いいのをつくったぞと、手を挙げてアピールするくらいの元気がなければ」と、檄(げき)が飛んだ。

 中学時代に建築に興味を持ち独学で勉強したこと、24歳で世界の建造物を見て回ったことなど、「経験」が何よりの「学び」になったと言う安藤さんは、生徒たちにはっぱをかける。「吉田松陰を知っていますか? 黒船が来た時、命がけで世界を見てやろうとした。みなさんも負けずにもっと好奇心を持ってください」

授業風景

 安藤さんの話に、ぐいぐい引きこまれていく生徒たち。「質問はあるかな?」という声に、今度はさっと手が挙がる。「建築の魅力は?」「やりがいのあった仕事は?」……。全員が建築科とあって、偉大な“先輩”の体験談に興味津々だ。

 「建築は設計士、大工さん、左官屋さんなど、大勢の共同作業。この“みんなでつくる”という点に喜びを感じます。助け合う心こそ、家族や地域社会を大切にしてきた日本の美学。みなさんも、人や自然と対話できる大人になってほしい。そしてこの地で家族をつくり、東北をもりたてていってください」

 自分の仕事にこだわりを持ち続ける心、困難にぶつかっても諦めない心、命を尊ぶ心――たくさんの「心」を説いた安藤さんの周りには、授業を終えても生徒たちの輪ができていた。

●宮城県大崎市、全校708人、森武彦校長。授業を受けたのは建築科1・2年各40人と3年15人の計95人。担当は斎藤一豊先生。

集合写真

桑折(こおり)治樹くん(1年)

「自分の建築にこだわりを持つ先生はすごい。僕もそう思える仕事に就きたい」

浅野由希さん(3年)

「春からは就職。人とは“気持ちで話す”という教えを忘れずに頑張ります」

安藤さん

「今の若者は明治維新や戦後にあった“野性”が足りない。東北の未来を担うみんなには様々な体験をし感動をし、自分で考える力を養ってほしい」

(文・吉岡秀子 写真・吉永考宏)
(朝日新聞朝刊掲載2012/3/5)