どくしょ応援団

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2012年度のレポート [中・高校編]

東京成徳大学高

講師:誉田哲也さん

講師プロフィール

授業風景

 「小説って何だと思いますか」。視聴覚室の45人を前に、作家の誉田哲也さんは開口一番、問いかけた。授業に臨んだのは図書委員や文芸部員ら。「本好き」たちにふさわしい質問だ。

 「こうすると、わかるよね」と、黒板にチョークで「小説」と書く。「小さい説という意味ですか?」と、声が上がった。

 「正解。君子が国家や政治論を説くのが大きな説の『大説』。市井の人の世界を描くのが小さな説『小説』。小説は、人はどう生きるべきか、社会とどう関わるか、書くものだよ」

授業風景
授業風景

 続いて「小説を構成しているものは?」と誉田さんがクイズのように問う。「主人公」「舞台設定」「メッセージ」と、すぐさま答えが出そろった。

 誉田さんが思わず「いいね!」とうなったのは、どんな作品にも、「テーマ」や「メッセージ」を込めて書いていることに、気づいた生徒がいたからだ。

 さっと読んだだけではわからない。しかし、残忍な殺人シーンのある作品『ストロベリーナイト』にも、さわやかな青春物の「武士道シリーズ」にも、「自分がどう生きるかは自分でしか決められない」という共通のテーマを込めている。そのことを誉田さんが明かすと、みんなびっくり。

 では、人々の日常をエンターテインメントへ昇華させる「作家」とは、一体どんな職業なのか?

 「小説を料理に例えると、題材をどう味付けするかが作家の仕事です。おいしいだけでなく、栄養になるテーマで書き続けたい」

 最後に、ミュージシャンになる夢を諦めた誉田さんが、ベストセラー作家になりえた「秘密」も披露した。「何歳からだっていい。やってやるぞ、と強く思い、実行することで、可能性の扉は開くものです」

●東京都北区。全校1187人、木内秀樹校長。授業を受けたのは1〜3年生の図書室利用者45人。担当は水村一恵先生。

古内理人(りと)くん(1年)

「小説のエンターテインメント性に興味がありましたが、作家のメッセージも読もうと思いました」

前田安咲季(あさぎ)さん(3年)

「誉田さんの作品は、リアルな描写が魅力。お話を聞いてますます小説が好きになりました」

誉田さん

「話が『楽しい』『きれい』だけでは、小説にならない。それを理解してページに向かうと、また違う感性で読むことができる。みんなの反応がとてもよく、有意義な時間を共有できました」

(ライター・吉岡秀子 写真家・馬場磨貴)
(朝日新聞朝刊掲載2013/1/26)