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気張らず無理せず300話 平岩弓枝さん「御宿かわせみ」シリーズ

「御宿かわせみ」シリーズについて語る平岩弓枝さん

「御宿かわせみ」シリーズについて語る平岩弓枝さん

 江戸時代から営まれる、小さな旅宿を舞台にした平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」シリーズ。その最新作『青い服の女』(文芸春秋、1,512円)が刊行され、300話に到達した。始まりは44年前。「こんなに長く書くことになるとは思いもしなかった」。そう語る平岩さんに、いま、宿る思いをたずねた。

 大川端の宿「かわせみ」の主人るいは優しく辛抱強い、平岩さんの理想の女性だ。もり立てる番頭や女中たちとともに織りなされる人情話は、テレビドラマとしても親しまれた。

 1973年、「小説サンデー毎日」で始まった。江戸時代後半の物語と定めたのは、それなりに安定した世の中だったから。そこで生き生きと暮らす庶民の中から人物像を描きだす狙いだった。「戦争が起きる時代の大将を描くより、市井で起きる出来事を描く方が、私には合っている。気張らず、無理せず。それが長続きにつながった」

 自身は代々木八幡宮(東京都渋谷区)のひとり娘。幼い頃から、何くれとなく集う氏子たちが、宮司の父と交わしていた町の話題が、物語の素地になっている。

 後に「オール読物」に発表の場を移し、35巻目からは明治時代を舞台にした新・御宿かわせみシリーズとなった大河小説。累計1800万部に迫る。

平岩弓枝著『青い服の女』(文芸春秋、1,512円)

平岩弓枝著 『青い服の女』
(文芸春秋、1,512円)

 『青い服の女』は41巻目。「この春、かなり大規模な改装をして新規開店をした」かわせみ。千客万来のなか、またも事件が起き、心の機微が映し出される。

 59年、27歳のとき「鏨師(たがねし)」で直木賞を受け、昨年は文化勲章を受章。長い道のりを恩師の小説家・劇作家、長谷川伸のこんな言葉を胸に刻み、歩んできた。「ストーリーを書くんじゃないよ。どんな人間を書きたいのかということだ」

 85歳になったいま、執筆は、体力、知力の衰えとの戦い、と明かしつつ語る。「いつの時代も変わらない喜びや悲しみ、憂いを書いてきました。若い人に新しくファンになってもらえたら、うれしいですねぇ」

(木元健二)



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