どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

私、本の味方です

池上 彰さん

池上彰さん写真

「本の味方」日記

5月25日 読めば読むほど深い。松本清張作品
 このところ書店には松本清張の本が並んでいます。原作がテレビドラマ化されたということもありますが、今年は生誕100 年なので、それを記念する本が多数出版されているのです。
 松本清張は推理小説の作家として有名になりましたが、昭和の歴史を調べたり、過去の首相の仕事ぶりについて本を書いたりと、大活躍でした。
 推理小説には、ヒットしても、すぐに内容が古くなってしまうものが多いのですが、松本作品は、いつ読んでも新鮮です。人気推理小説が「古典」になったのですね。
 私が松本作品を読み始めたのは、NHKで警察担当の記者になったときです。先輩記者に、「松本清張を読んでおけ。役所の汚職事件が、どのようにして生まれるかよくわかって勉強になるぞ」と言われたからです。
 さっそく『点と線』から読み始めたところ、その面白いことといったら! すっかり推理小説が好きになり、松本清張以外の作品もむさぼり読みました。その結果、肝心の仕事のほうはおろそかになってしまったのですから、清張おそるべし、です。

 私の「どくしょ応援団長」は、今週まで。ご愛読ありがとうございました。たまには私の本も読んでくださるとうれしいな。

5月18日 映画を見る前に、原作を読む楽しみ
 「読んでから見るか、見てから読むか」
 かつて、こんな宣伝文句がありました。映画を見るのと、原作の小説を読むのと、どちらを先にするか、というわけです。実はこの宣伝文句を考えたのは、原作の小説を出している出版社で、映画の制作にも携わっていました。どちらでも利益がある、という立場だったのです。
 先週から『天使と悪魔』の映画が公開されています。書店に行くと、原作が山積みです。近いうちに、映画『ハゲタカ』も公開されます。それに先立って、映画の原作になった『レッドゾーン』(真山仁著)が発売されました。
 こうなると、まさに読んでから見るか、見てから読むか、ですね。私個人としては、「読んでから見る」ことをお勧めします。
 本には映像や音声がありません。活字を目で追いながら、頭の中にイメージを作り上げていきます。これが楽しいのです。映画を先に見ると、本を読んでも、映画のシーンばかりが頭に浮かんでしまいます。
 先に原作を手に取り、「自分が映画監督だったら、この部分は、こんなシーンにしよう」と考えながら読む。その後で映画を見て、自分のイメージと映画監督の作り出したイメージとの落差を楽しむ。これがいいと思うのですが。
 ちなみに、多くの映画監督は、原作通りに映画を制作することを嫌います。原作を読んでから映画を見ると、「結末が原作と違うじゃないか!」と驚くことがしばしばあるのです。これもまた、ひとつの楽しみ方です。

5月11日 「インフルエンザ」を読もう
 連日、新型インフルエンザのニュースばかりですね。豚肉を食べながら、新型インフルエンザの新聞記事を熟読する日々でした。
 このニュースでは、「スペイン風邪」という言葉が出てきます。1918年に大流行しました。インフルエンザと風邪はまったく別のものですが、このころはインフルエンザのことがよくわかっていなかったので、風邪と呼ばれていたのです。
 スペインと名前がついていますが、スペインで生まれた病気ではありません。当時は第一次世界大戦の真最中。自国の兵士がバタバタと倒れていくことを各国はひた隠しにしていました。スペインだけは中立国で戦争に加わっていなかったので、流行を発表。そのまま病気の名前になってしまいました。
 当時、各国が戦争をしていなければ、流行を防ぐために協力できたでしょうにね。
 こんな話を知ると、インフルエンザの歴史の本を読みたくなりませんか。以下の本がお勧めです。

  岡田吉美著『ウイルスってなんだろう』(岩波ジュニア新書)
  山本太郎著『新型インフルエンザ』(岩波新書)
  岡田晴恵、田代眞人著『感染症とたたかう』(岩波新書)
  NHK「最強ウイルス」プロジェクト著『最強ウイルス』(NHK出版)
  アルフレッド・W・クロスビー著、西村秀一訳『史上最悪のインフルエンザ』(みすず書房)

5月1日 機内読書の楽しみが、飛んだ!
 あなたは、この連休中、どこかへ出かけますか。遠くへ出かけるとき、本を持っていくことがありますか。
 私はこの連休中、キューバに行く予定でした。往復に長い時間がかかりますから、飛行機の中で、どんな本を読むか、旅行前から選択に頭を悩ませます。悩ませるとは書きましたが、もちろん楽しい悩みです。
 その結果、まもなく映画が公開されるダン・ブラウンの『天使と悪魔』を買い込みました。上中下の3巻という長編ですが、文庫なので飛行機の中で場所をとりません。これでOKと読書を楽しみにしていたのですが……。
 キューバに行くには、アメリカとメキシコを経由します。豚インフルエンザで、メキシコとキューバを結ぶ飛行機が運休。旅行はとりやめになってしまいました。
 だったら家で本を読めばいいようなものですが、「飛行機の中で読む」と決めていたため、手に取る気になりません。不思議なものですね。

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「本の味方」宣言

読書の積み重ねが、顔に出ます!

 春の応援団長を務めます池上です。私の大好きな、あさのあつこさんが初代応援団長。私が二代目です。

 あさのさんは、本を読んだからといって「美しくなるわけでも」ありません、と断言していらっしゃいましたが、私はそうは思いません。若い頃からたくさんの本を読んでいる人は、それが顔に出るのです。ほら、あさのさんが、そのいい例でしょ。

 若い頃の顔は、親から受け継いだものですから、自分ではどうしようもありません。でも、歳をとってからの顔は、自分が作り出すもの。そんなことをアメリカのリンカーン大統領も言っています。年齢を重ねていくうちに、内面の美しさが顔に出てくる。そんな人生って、素敵だなと思います。そのためにも、たくさんの本を読みましょう。

春の応援団長
池上 彰

いけがみ・あきら ジャーナリスト。1950年長野県生まれ。慶応大学卒業後、NHK記者に。94年から11年間、「週刊こどもニュース」の「お父さん」役として国内外のニュースをわかりやすく解説した。著書に『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)『「見えざる手」が経済を動かす』(ちくまプリマー新書)『14歳からの世界金融危機』(マガジンハウス)など。