
「本の味方」日記
9月30日 おれには生涯おまえが……
白刃をギロリと振りかざし「おれには生涯おまえという強い味方があったんだ」と、つぶやくのは国定忠次であったか、近藤勇であったか、このさいせりふの出どころは置くとして、落魄(らくはく)のヒーローがあらためて生涯の味方に思いを馳せる場面には同感が湧いてきますね。
そこで私、ヒーローって言うほどの立場ではないけれど、いつか体も弱って病院のベッドで独り、つぶやくとすれば枕もとの愛読書をなでなで「おれには生涯、読書というすてきな味方があったんだ」でしょうね。
視力も気力も弱っているでしょうけれど、気分としては「生涯楽しませてくれたなあ」とお礼を言いたい。今からそれは断言できます。
そうなんですよ。読書は、その楽しさを知って身につけたら一生、いつでもどこでも、たった一人のときでもよい味方になってくれるすてきな友人です。ドウ・ユー・アンダスタン?
9月24日 言葉遊びのすすめ
「あんた教養あるねえ。いつから?」「今日よ」。日々の会話で時おり耳にするシャレのたぐい。駄ジャレと呼ばれて馬鹿にされたりもします。
シャレばかりでなく言葉遊びは日本語の大きな特色の一つ。おそらく日本語ほどさまざまな言葉遊びを持っている言語は世界中ほかにないでしょう。なぞかけ、数え歌、早口、回文、無理問答、いろは歌なんて凄いじゃないですか。平がなを全部を一回ずつ使って、しかも人生の哲理を訴えています。「米という字はな、八十八と書いて、米を作るにはそれだけ手間がかかるんだよ。大切に食べなさい」という漢字遊びもあるし、“いにしえの、昔の武士のさむらいが、馬から落ちて落馬して……”。なんと呼んでいいのかわからないしろものもあります。
言葉遊びは言葉への関心を高めるもの、それは読書への入り口でもあり、子どもたちも大好き。このあたりに読書へのいざないがあるのかもしれません。
9月16日 ミステリーへのいざない
どのミステリーがおもしろいですか? 昨日も聞かれました。初めての読者には短編小説なら私は『シャーロック・ホームズの冒険』、長編なら『グリーン家殺人事件』を勧めます。コナン・ドイルの生んだ名探偵は世界的なビッグ・ネームです。『まだらの紐』」『赤髪組合』などなど一読して損はありません。ヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』は、もう本当に古典的な名作。ミステリーを読み慣れた人なら冒頭の事件を読んだだけで犯人がわかってしまうけれど、初心者はすっかり騙されますね。それが古典というものでしょう。今でもページをくると、初めて読んだ日の興奮が胸にこみあげてきます。本当に懐かしい。
「本の味方」宣言
読書がぼくらを自由にする
フレー、フレー、フリー、フリー。読書は自由です。いつでも、どこでも、たった一人で楽しめます。なんでもそろっています。しかも本は安い。自分に役立つもの、おもしろいものを見つければ、心ゆくまで自由につきあえます。お金、お金、お金と、お金を使うことばかりが好きになると、人生、結構、難儀ですよね。読書はぼくらの心を自由にしてくれます。心の喜びを育ててくれます。だから、今すぐ一冊。イマジネーションを広げて、フレー、フレー、フリー。
秋の応援団長
阿刀田 高




