特報─調査報道・スクープ

 新聞社には、警察や検察のような強制捜の権限はありません。
しかし地道な調査が時に政権をも揺るがす力になりうるのです。

調査報道が、省庁トップの辞任、逮捕につながった


防衛省から押収物をトラックに乗せる東京地検の係官ら=07年11月29日夜、東京・新宿で

 「全体の奉仕者」であるべき国家公務員が、特定の業者から私的に利益の提供を受け、行政がゆがめられている。そんな腐敗を暴いて報道する特報は、ジャーナリズムの大切な役割です。朝日新聞は2007年10月19日の朝刊で、自衛隊員トップの地位にあった守屋武昌・元防衛事務次官が軍需専門商社の専務から繰り返しゴルフ接待を受け、自衛隊員倫理規程に違反していた事実を報道。翌20日の朝刊では、暗がりのなか元次官と元専務がすし店から連れ立って出てくる様子を撮影した写真とともに「守屋前次官、軍需業者支援で口利き」との続報を掲載しました。元次官と業者の異様な癒着がこれによって、世の中の人々に決定的に印象づけられたのです。

 これらの報道を受けて、防衛省は内部調査を始め、元次官は倫理規程違反を公に認めざるをえなくなりました。国会は元次官を証人として喚問し、ゴルフ接待が200回を超える事実や元専務と元次官が一緒に泊まりがけの旅行を繰り返していた事実が明らかになりました。防衛装備品調達の改革をめぐる議論が加速されました。

 朝日新聞は1996年、当時の岡光序治・厚生事務次官と業者の癒着を特報したことがあります。これをきっかけにして、防衛庁を含む各省庁は職員倫理規程を制定し、事態はいくぶんか改善されました。守屋元次官は07年11月末に逮捕されましたが、事務次官経験者が公務員としての職務に関する収賄で逮捕されるのは96年12月の岡光元次官以来のことでした。

求む、ニュースの素材

 厚生労働省や社会保険庁の職員らが、公費で大量購入する書籍の出版元から「監修料」を受け取っていた事実も朝日新聞が04年に特報しました。業者と癒着して公費を私的にかすめ取る行為でしたが、当時は違法ではありませんでした。この報道をきっかけにして倫理規程は再び改正されました。「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対腐敗する」。これは英国の歴史学者の言葉ですが、各国の歴史がまさにこの言葉を証明してきました。制度の改正が重ねられても、公務員の腐敗が絶えることはありません。権力を監視し、腐敗を調査報道する新聞の役割は今後も変わりません。

 朝日新聞では、08年9月より、情報提供をネットユーザーに呼びかける「求む!ニュースの素材」を開設しました。この中に、「こちら調査報道班」という窓口があります。役所や企業からの内部告発、機密性の高い情報提供を求めるものです。読者の方たちの協力を仰ぎながら、少しでも腐敗の是正を進めていきたいと考えています。

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