JSEC2012 グランドアワード・特別協賛社賞・協賛社賞・主催者賞・特別奨励賞・審査委員奨励賞

グランドアワード

文部科学大臣賞

 世間では遠隔操作ウイルスが話題になっていますが、Androidに対するウイルスも大きな問題となっています。しかし、現状では人間が見つけたウイルスをブラックリストに追加して対応するという方法しか確立しておらず、いたちごっこが続いています。そこでSEAndroidを使って、機械が自動的にウイルスを判別するシステムを新たに作成しました。

 このシステムはウイルスの挙動を自動で学習して、精度を高める機能を搭載しています。これを用いることで、新たに作成されたウイルスにも自動的に対処できるので、今までよりもAndroidのセキュリティーを大幅に高めることができます。


科学技術政策担当大臣賞

 先輩の研究で、ゾウミジンコは昼間池の深いところにいて、夜になると水面近くまで移動することを確認した私たちは、ゾウミジンコが、なぜ体長の何倍もの距離を毎日移動するのか研究しました。

 まずゾウミジンコの走性について2年間にわたる追試を繰り返し、データを分析。それを基に、池に大規模な実験装置「Lのぼる君」(深さ6.5mの水槽)を作成し、異なる水質条件下でのゾウミジンコの垂直分布を調べました。その結果、ゾウミジンコは太陽光に対して負の走行性(光源の反対側へ移動する)を示すこと、「二酸化炭素濃度の高さ」「酸素濃度の低さ」「エサ不足」が負の重力走性(上への移動)を引き起こすと考えられることが分かりました。


科学技術振興機構賞

 宇宙ステーションの中で宇宙飛行士がフワフワと浮き上がっている様子、エレベーターやジェットコースターに乗っている時のふわりと体が浮く感覚。そんな「無重力(微小重力)」と呼ばれる状態を、小さな箱の中に作り出しました。

 私たちが開発したのは、微小重力環境で実験するために、約0.5秒と短い時間ながら、極めて変動の少ない良質な微小重力環境と、地上重力から微小重力へのスムーズな移行を実現する装置です。この装置は既に「はやぶさ2」サンプラーホーン設計の予備実験に使われました。地球と引き合う環境から、重力が存在しない環境へ。その一瞬の変化で見えてくることが、たくさんあるのです。

特別協賛社賞

富士通賞

 グランドアワード (文部科学大臣賞)とダブル受賞。

協賛社賞

アジレント・テクノロジー賞

 六価クロムとカドミウムによる環境汚染を解決するため、植物に吸収させる方法に着目しました。クロムを多く吸収する植物を簡単に探すため、葉の抽出液が六価クロムを還元する量を調べる1次スクリーニングを行い、その有効性をクロム溶液による水耕栽培で検証しました。また、1次スクリーニングで選別した植物はカドミウムも蓄積するのではないかと考え、水耕栽培で検証しました。

 その結果、葉の還元量とクロム蓄積濃度に相関があり、1次スクリーニングの有用性が示されました。また、マルチな超集積性植物6種のうち4種は1次スクリーニングの結果が高く、植物内のタンニンが重金属とキレートしていると考えられることも分かりました。


花王賞

 闘蟋(とうしつ)とは中国で唐の時代に賭け事として始まった、雄のコオロギ同士を闘わせて勝敗を決める競技です。その存在を知った私たちは実際にコオロギを闘わせてみましたが、その際に様々な疑問が生じたため、雄のコオロギ同士が出会った際に見られる闘争行動の要因について実験を行いました。具体的には「コオロギの身体的特徴は闘争行動に影響するか」「交尾の経験が闘争行動に影響するか」「コオロギを高密度環境、及び低密度環境下で飼育すると闘争行動に影響するか」を検討しました。

 その結果、闘争行動における勝敗の傾向として、触角が長く、交尾を経験しており、低密度環境下で飼育されたコオロギが強いことが分かりました。


JFEスチール賞

 試験管内で金属カルシウムと水を反応させると生成される膜が、水酸化カルシウムの懸濁液膜(けんだくえきまく)です。その生成条件を調べると、化学反応が起こる時に水に溶けにくい物質が生成し、かつ気体が発生することが重要だと分かりました。また、この膜の性質を調べると、水は膜を通過でき、エタノールなどの有機溶媒は通過できず、膜が破れてしまうことが分かりました。

 これらの実験結果から、溶液の粘性と表面張力が重要な役割を果たしていると考えられます。その検証を行うため、粘性や表面張力の異なる物質を水に混ぜてから金属カルシウムと反応させたところ、予想通り懸濁液膜は発生しませんでした。

主催者賞

朝日新聞社賞

 今回の研究で扱ったピタゴラス数とは、ピタゴラス生成行列という行列を使うことで子孫を生み出し、また子孫から始祖を判定することができます。自然数におけるピタゴラス数の始祖は(3,4,5)というただ一つだけで、ここからすべてが生み出される構造です。

 本研究ではガウス整数上の複数ピタゴラス数の生態系の構造に迫り、その結果、複数ピタゴラス数の始祖は一つではなく無限に存在し、それらの家系を特徴づける遺伝子を発見しました。私はその遺伝子に「ジーン」という名を付けて研究しています。

特別奨励賞

テレビ朝日特別奨励賞

 オヤニラミの鰓蓋(えらぶた)には目のような模様があり、オヤニラミ同士が出会うと激しくけんか(闘争行動)をします。目のような模様には濃い青色、赤色、金色の斑紋があり、これが闘争行動を引き起こす刺激になっているのではと考えました。

 そこでオヤニラミを模したカードや模型を作り、闘争行動がどのような刺激によって引き起こされるかを調べました。実験の結果、オヤニラミは目のような模様を見ていて、この斑紋の色によって闘争行動が引き起こされている可能性があると思われました。


花王特別奨励賞

 麻機池(静岡市)へ連続的に流入する低濃度の硝酸イオンを除去する装置を開発しました。装置に硝酸イオンが入ると、吸着剤に引き寄せられます。吸着剤はナノサイズの層を持ったハイドロタルサイトに、光触媒である二酸化チタンの微粒子を固定して合成しました。吸着剤の層を形成する物質は陽電荷を持ち、硝酸イオンは弱いながらも陰電荷を持つため、層の間に集めることができます。

 集められた硝酸イオンは光触媒に当たる太陽光に含まれる紫外線のエネルギーで窒素ガスになり、20〜40%が除去されます。さらに装置内の電極で水を電気分解して発生させた水素ガスを吸着剤に残った硝酸イオンに当てることで90%以上を除去できます。

審査委員奨励賞

 サンショウウオは人間による自然破壊を原因に、その個体数が激減しています。私たちが研究材料にしているオオイタサンショウウオも絶滅危惧 ll 類に指定されています。そこで私たちは希少野生動物であるサンショウウオを保護するために、飼育下での繁殖に取り組みました。

 まず飼育方法の確立を目指しました。その内容は「幼生の飼育方法」「発生段階」「性成熟」です。さらに受精卵の入手方法の確立を目指し、親個体を殺さずに済む「自然繁殖」と「人工授精」の方法を確立することができました。


 整数に関する定理に、「ある自然数が二つの平方数の和で表すことができるかどうかは、その数が持っている素因数を調べることで判別できる」という二平方和の定理があります。今回、この定理の対象を整数からガウス整数(実部と虚部が共に整数である複素数)に拡張し、「平方数」の意味を「ガウス整数を2乗した数」とした時に、この定理にどのような変化が見られるかを研究しました。

 同時に、この定理の描く平方数に何らかの係数がかかった時に、定理にどのような変化が見られるのか、それぞれの係数の場合に共通した性質があるのかも研究しました。


 地球の磁場は1個の棒磁石が周囲に作る地場とよく似ています。もし棒磁石と同じであるなら、地球の自転方向とは逆向きに、赤道に沿った円形の電流が流れていなければなりません。今回は気象学でよく知られている「三重水槽」をヒントに実験し、それを確かめることができました。さらに発展して、地球磁場が逆転するメカニズムについても説明できる結果を得ることができました。

 身近な道具を用いて地球の内部のダイナミズムを再現できたことに、私たち自身とても驚いています。