JSEC2013 優等賞

【動物科学】

 国の天然記念物であるミヤコタナゴの産卵母貝となるイシガイ類は個体数が減少している。そこで、人工繁殖に最適なイシガイ類について研究した。

 5種のイシガイ類を用いて、種の判別をするために形態的比較を行い、飼育の容易さを知るために人工飼育下での生残率や餌のろ過速度を調べた。次に、最も繁殖可能な種を知るために月別の繁殖回数と合計繁殖回数を調べた。また、幼生の形態、変態した割合と寄生期間の関係、及び変態成功率を調べた。

 その結果、生残率が高く年間を通じて繁殖が期待でき、寄生個体数が多く、変態成功率も高いタガイが最も人工繁殖に適していると考えられた。


【動物科学】

 本研究ではアカハライモリを用いて、核を除いた未受精卵に胞胚の核を入れる「核移植」という方法で「クローンイモリ」の作成を目指した。

 まず、核移植に使うガラス製の針の作製、ホルモン注射による産卵誘発での採卵、マイクロインジェクターによる核移植、移植した卵の賦活(細胞分裂開始)についてそれぞれ条件を確立し、実験を進めていった。382個の未受精卵を使用して22回の核移植実験を行い、桑実胚(3.3%)、胞胚(0.3%)段階まで発生させることに成功した。特に、21回目の移植実験では桑実胚までの到達率を38.3%にまで上げることができた。

 木村佳奈子さんには、あわせて「インテル奨励賞」が贈られました。

 インテル奨励賞: Intel ISEFのタイトルスポンサーであるインテルから、今回特別に女性研究者を応援するために設けられた副賞です。研究奨励のために図書カード3万円分が、インテル株式会社より贈呈されました。


【動物科学】

 鹿児島県の本土から約50kmしか離れていない黒島に、本土産とは形態の違いが指摘されているミヤマクワガタがいることを知り、亜種(別の種に分けるほどの差はないが、簡単に見分けられる特徴を持つ個体群)に分類できるのではないかと考えて研究を行った。

 黒島産ミヤマクワガタについて挙げられている本土産と違う点、具体的には、腹部の幅、脚の?節の長さ、耳状突起の大きさ、大アゴの湾曲度、DNA等の比較を通して、様々な相違点を確かめた。

 その結果、1個体だけを見て識別できる決定的なポイントが見つからず、「現段階では亜種に分けるべきではない」という結論に至った。


 【細胞・分子生物学】

 生物は網膜に含まれる視物質が光を受けることで脳に電気信号を送り、物を視ている。特に魚類の中には複数の視物質をもつものがいることが知られている。本研究では、魚類のもつ視物質の種類と生活環境の関係について調べ、魚類の進化について考察した。

 研究方法としては、調査対象の魚類を採取し、網膜に含まれる発色団(レチナール)を抽出して高速液体クロマトグラフィーで分析、魚類の持つ発色団を同定した。

 今後は魚類の遺伝子を解析し、魚類の進化と視物質の関係について研究を行いたい。


【化学】

 一般的に物は冷やすと凍るが、普通に冷やしただけでは凍らない物質も存在する。その1つがグリセリンで、グリセリンを凍らせるには大変な手間と労力を必要とする。どうして凍りにくいのか、簡単に凍らせることはできないか?この研究では、グリセリンの結晶化、分子構造の観測、計算科学的手法による安定配座解析、グリセリン類似物質の結晶化実験を行った。

 それぞれに工夫しながら実験を行った結果、結晶状態の時に形成される分子間水素結合ネットワークが、グリセリンの不凍性の一因であると考えられた。これらの成果は、超分子化学や物性物理分野の研究に生かしていけると期待している。


【化学】

 銅イオンを含む水溶液に亜鉛を浸けると、その表面から銅の結晶が成長し、金属樹ができる。同様に、金属樹は様々な金属元素を用いて作成でき、それぞれ異なった形状を持っている。これらを系統的に考察するために、どのようなファクターが形状に影響を及ぼすか、実験とシミュレーションで研究した。

 実験では、水溶液や金属板の種類を変えて金属樹を作成して比較した結果、電流密度や枝の角度が重要だと分かった。シミュレーションでは、金属樹の成長の速さ、枝分かれの数および枝の角度が再現できたが、太さは再現できなかった。この結果から未だ考慮されていないファクターが存在すると考えられる。今後さらに新たなモデルを作成していきたい。


【化学】

 「繰り返しのリズムをもつ化学反応」についてはこれまで多くの研究がされているが、今回は、「硫酸アンモニウム-亜硝酸ナトリウム系発泡振動反応」を研究した。

 2種類の溶液を混合して静置すると、気泡が多数発生して液面が上昇する。しばらく気泡の発生が続くが、徐々に気泡の発生が弱まり液面が下がる。まもなくして、再び気泡の発生が盛んになり、液面が上昇する。この「発泡振動反応」を数値で測定する方法を確立し、非線形現象であることを検証し、振動のメカニズムを解明することを目指した。その結果、発泡による質量変化に着目して数値的表現に成功し、非線形現象であることを示すことができた。


【化学】

 BZ反応は溶液の色が赤と青に周期的に変わる化学振動反応であるが、一旦振動が停止した後再び振動が始まる「振動の復活」に興味を持った。

 反応溶液を48時間撹拌して測定結果をコンピューターで記録する方法を、硫酸と触媒の濃度は一定にし、マロン酸(反応基質)と臭素酸ナトリウム(酸化剤)の濃度を変えて行った。溶液の中では酸化と還元が交互に起こり、それに伴い電圧も変化する。

 実験の結果、振動が2度起こる濃度領域が存在した。マロン酸と臭素酸イオンが消費され、触媒が溶液中で解離することで1つ目の振動が定常状態になり、マロン酸と臭素酸イオンとフェロンの濃度がさらに小さくなることで、2つ目の振動が起こると考えた。


【環境科学】

 安全な飲用水の確保のために、魚類を使った毒物検出装置があるが、脊椎動物に苦痛を与えることなく、安価で小型な水質監視装置を開発したいと考えた。

 学校周辺に多数生息するナミウズムシ(プラナリア類)の行動特性を調べたところ、暗い場所を好み、高温を嫌うことが分かった。また、銅イオンなどの有害物質に対して、水道水の水質基準に近い濃度で死に、安全な水の検査に利用できる可能性が考えられた。そこで、検査する水を流す管の一部にナミウズムシを入れ、光と熱でその場所から出さない構造の装置を制作した。有毒物質を含む水によってナミウズムシが死ぬと、下流のセンサ部に押し流されて検知され、警報を出す仕組みである。


【数学】

 今回の研究は、作図を3次元で行うというものだ。そこで、「平面上で定規とコンパスで作図できる点はコンパスのみで作図できる」というMohr-Mascheroniの定理を3次元で示すことに成功した。

 この研究における定理を使うと、例えば立方体や正二十面体の頂点を3次元におけるコンパス(球面をかく道具)のみで作図できることが分かる。このことを示すにあたって、「外接円コンパス」という道具を用いて、二次元と三次元の作図を対応させる。この対応というのは、簡単にいうと、3次元のものに光を当てて影(2次元のもの)での作図を考えるというものだ。これを数学的に定式化した。


【数学】

 汎魔方陣とは、行、列、対角線、汎対角線の和が等しい方陣である。規則的な性質を持つ、最も簡単な汎魔方陣である5次汎魔方陣を研究した。

 その結果、全ての5次汎魔方陣は左桂馬飛びの汎ラテン方陣と、右桂馬飛びの汎ラテン方陣の1つずつから成っていることが分かった。また、汎ラテン方陣を3D回転させることと桂馬飛びの方向変換は同値であることを見出した。これらのことから、5次汎魔方陣の簡単な作り方として桂馬飛び法が考えられ、自分たちなりの方法で5次汎魔方陣の総数が144個であることを導くことができた。


【数学】

 昨年の研究で、3乗して2になる数(3乗根2)や、5乗して7になる数(5乗根7)などに、限りなく近い分数を生み出す公式を見つけ、それをペル表現と名付けた。今回の研究はこの公式を応用することを目標にした。

 平方根に関してその近似分数はペル方程式の解に関係があることが知られている。そこで、n乗根について、「ペル表現」はn次ペル方程式と呼ばれるものの解に関係があるのではないかと調査し、いくつかの有益な結果を得ることができた。また、ペル表現に、別な観点からある操作を与えてみたところ、そこからいろいろな振動を表すグラフを生み出すことにも成功した。


【数学】

 この研究は、分配束という、対象をある観点から見て絵を描いたときに現れる視覚的な形状の概念を数学的に定式化するというものである。

 分配束を調べるにあたって、抽象的で見えづらい分配束を見えるところで見ることが必要になる。そのために別の2つの世界(T_0空間・半順序集合の世界)を渡り歩く。つまり広い場所で議論を展開する必要が出てくる。最終的には分配束に本物の形状を与え、我々の住むユークリッド空間に幾何学的に実現することになる。抽象の世界と現実の世界とをつなぐのが今回の研究の見どころといえるだろう。


【物理学・天文学】

 金星の大気に起こる高速回転運動「スーパーローテーション」は、1957年に発見されたが、その原因は分かっていない。そこで、この現象に興味を持ち研究を行った。

 始めに天体望遠鏡に紫外線透過可視光線遮断フィルターを取り付け、金星の紫外線撮影を行った。次に、惑星探査機Galileoが撮影した紫外線画像を用いて雲の動きの解析をした。解析には、異なる時間に撮影した2枚の金星画像の似た雲のパターンの移動から速度を求める方法や、天体画像解析ソフトで金星の輝度を計測してその形の類似性を統計的に比較する方法を用いた。

 この結果、金星の大気の動きは53〜74m/sの東風で、高緯度ほど遅く、低緯度ほど速いことが分かった。


【物理学・天文学】

 食変光星は、2つの恒星が互いの周りを公転し合い、地球から見たときに食を起こすことで見かけの明るさが変化する。この研究では、ライトカーブ(光度曲線)とシミュレーションを用いることで、その形を知り、分類しようと考えた。

 まず、ライトカーブの形での分類を行った。次に、起こっていると想定される現象をシミュレーションで再現し、ライトカーブを描いて6次関数で近似して係数部分の法則を見つけ、そこに実際のライトカーブから近似した係数を当てはめて、食変光星を分類した。さらに、大きさの比や明るさの比などの条件を変えて分類を行った。


【物理学・天文学】

 針金にしゃぼん膜を張り、それに音を当てて振動させると、しゃぼん膜には模様が現れ、また表面にたくさんの渦が巻く。この模様や渦ができる原因を探った。

 模様は偶数×偶数個のマス目状で、当てる音の振動数を変えていくことでマスの数が変わる。この関係性から、計算で、模様が膜振動の定常波だということが分かった。そして、渦の方はしゃぼん膜の向きを変えて観察し、その特徴を見ることで原因を推測し、渦の発生は定常波にできる凹凸と重力により膜の流れの速さに違いが生じることによるものであると予想できた。


【物理学・天文学】

 下敷きをたわませたときに発生する"ホワン…ホワン…"という奇妙な音。研究ではこの奇妙な音の原因を探った。

 まず、どの高さの音がどの程度あるのかを解析した。その結果、一回の"ホワン"という約0.06秒の間に、低音(140 Hz)から高音(915Hz)に高速かつ連続的に変化していることが分かった。これが音の奇妙さの原因と考えられる。次に、音の高さが変わる原因は何か。下敷きのたわみ具合が変化することで、下敷きの硬さ(ヤング率)が(下敷きを伝わる振動の視点からすると)変化する。これによって下敷き上の振動が変化し、音となって表れているためと考えられた。


【植物科学】

 樹木は生態系の生産者として、多くの生物の生活を支えている。その種類が異なると、落葉の分解者である細菌やそれらを食べるとされる粘菌の種類がどのように異なるかを研究した。

 その結果、樹木が異なると落葉の化学性が違い、分解力や働きが異なる微生物が存在することが分かった。目に見えない細菌はDNAの違いを比較した。樹木の種類が違えば粘菌の仲間も違ってくることも分かった。こうして、目に見えない分解者の世界(腐界)が、粘菌を比較してみることで分かり、つまり、樹木がそれぞれに優占する場所によって腐界は異なっていることから、樹木は小さな生態系をつくっていることが明らかになった。

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