JSEC2013 グランドアワード・特別協賛社賞・協賛社賞・主催者賞・特別奨励賞・審査委員奨励賞

グランドアワード

文部科学大臣賞

【動物科学】

 オカダンゴムシは迷路を歩かせると左右交互に曲がる。この行動のメカニズムは「左右の脚の運動量を均一にする」ためという説が有力だが、小学5年の頃からの観察で、触角の役割が大きいのではないかと考えてきた。そこで触角の影響を確かめるため様々な実験を行い、転向反応が触角の接触によるものだということを確かめた。

 また、有力な説であった「左右の脚の運動量の差」が左右の触角の接触に偏りを生むことを発見し、触角の接触と脚からの刺激という一見関係のないように見える2つをつなぎ、交替性転向反応を論理的に説明することに成功した。


科学技術政策担当大臣賞

【コンピューター科学】

 「初音ミク」以来発展を続けてきたボーカロイドは、今や若者の音楽文化の一端を担う存在となっている。今回、そのボーカロイド楽曲の構造理解に取り組んだ。

 本研究では、従来の楽曲の構造理解へのアプローチである音響信号の解析に加えて、ニコニコ動画のコメント機能を用いて投稿された文章を分析することによって、構造理解の精度向上を可能にした。コンピューターは歌詞の意味を理解するのが苦手だが、人間が投稿したコメントを利用することで盛り上がりなどが分かるようになり、高い精度で「サビ」の検出を行いことができるようになった。


科学技術振興機構賞

【動物科学】

 絶滅危惧種のハクセンシオマネキという小さな白いカニの歩行パターンを数学的に解析した。まず、撮影した動画からカニの歩行をコンピューター上で検出し、時系列の移動データを抽出。これをもとに、関数構造を生成できる遺伝的プログラミングの手法を用いて、付近の他個体の座標を入力に含む移動位置の決定関数を統計学的に推定し、個体間の相互作用を分析した。

 その結果、個体群密度が小さいとき活動量が大きくなること、個体間である程度共通の歩行パターンがあり、移動には最も近い個体だけでなく2、3番目に近い個体も影響力を持つことなどが明らかになった。

特別協賛社賞

富士通賞

【コンピューター科学】

※科学技術政策担当大臣賞とダブル受賞

協賛社賞

アジレント・テクノロジー賞

【エネルギー・運輸】

 中学生の頃より継続してきたアジサイの研究を震災復興に活かしたいと考え、アジサイを利用した色素増感太陽電池を作製し、その高効率化と実用化を目指した。

 アジサイの色素を使った電池は他の色素を使った電池と比べても優れた電池特性を持つ。また、アジサイは塩分の多い土壌でも育ち、金属であるアルミニウムを吸収し、土壌浄化作用を持つ。そのため、津波被害のあった沿岸部でも良く育ち、自然エレルギーを供給できる可能性がある。

 研究の結果、青いアジサイが電池として最適であること、60℃で乾燥し抽出した色素を用いると良いこと、超音波を当てることで安定した電力を得られることなどが分かった。


花王賞

【植物科学】

 ヒマワリの花における種の並び方に注目して、繁殖の戦略にどのような影響があるか研究を行った。

 まず、コンピューターを使って、ヒマワリがどのように種を並べるのかを示し、それによって一つの種には同じ位の大きさに成長できる場所があるということを計算した。また、種の重さを一つひとつ精密天秤で量り、それぞれが発芽できるかどうかを実際に播いて調べ、ヒマワリの種はある大きさ以上にならないと発芽できないことを示した。この2つの事から、ヒマワリはある大きさ以上の発芽できる種をできるだけ多く作ることができるように種を並べる、ということが分かった。


JFEスチール賞

【地球惑星科学】

 縞状鉄鋼層という岩石を見て、25億年も前にできた規則正しい縞模様に興味を持ち研究を始めた。

 その一番の特徴である色鮮やかな縞模様がどのようにしてできたのか。まず、堆積の様子を調べて、この縞模様は潮の満ち引きによって作られたと考え、縞の数を数えた。次に、地球の自転周期と、月と地球の距離から、当時の潮の満ち引きの周期を求めた。すると、数えた縞の数と計算によって求めた潮の満ち引きの周期がほぼ同じ数値になった。これによって、縞状鉄鋼層の縞模様は、潮の満ち引きによって作られたと考えた。

主催者賞

朝日新聞社賞

【物理学・天文学】

 泥団子が重力に逆らって自分の形を保つことができる原因を探った。

 重力に逆らうことができる力の候補として、砂粒同士をつなぐ水に働く粘性(ねばりけ)・表面張力、砂粒同士の摩擦が考えられるが、粘性は静止している水には働かないこと、乾いた砂では泥団子が作れないことから、表面張力がその候補となる。そこで、表面張力が砂をどれくらいの強さで結びつけるかを計算で予想し、また、表面張力の異なる液体を用いて、砂が互いに結びつく力がどれくらい変化するかを実験で確かめた。その結果、予想された数値と実験結果は概ね一致し、泥団子は表面張力によって形を保っていることが分かった。

特別奨励賞

テレビ朝日特別奨励賞

【化学】

 東日本大震災後に発生した原発事故の後、野菜の屋内栽培が注目され、福島県いわき市では1日約10トンものトマトの茎、葉が廃棄されている。これを有効利用できないかと考えた。

 まず実験により、トマトの茎、葉がエチレンを除去していることを発見した。エチレンは果物の成長を促進させる性質を持つものだ。そこで、トマトの茎、葉を利用して果物の鮮度保持機能を持ったモールドを開発した。実際に製作したモールドの上にバナナを放置したところ、約100時間分の鮮度を保持していることが確認できた。

 今後、エチレン除去の機構解明を行い、将来的には商品化を目指していきたいと考えている。


花王特別奨励賞

【細胞・分子生物学】

 タマネギの根端の体細胞分裂には午前9〜10時をピークとするリズムが存在するという定説があるが、それを裏付ける研究はない。そこで、その真偽を明らかにし、また、光はこの体細胞分裂に影響を及ぼすかを明らかにするため、本研究を始めた。

 顕微鏡観察による細胞学的手法と、遺伝子の発現量を測定する分子生物学的な手法の2方向から検証を行った。その過程で、分裂期に特異的に発現するサイクリンB遺伝子にたどりついた。

 これを用いた実験の結果、タマネギの体細胞分裂には午前6時頃をピークとするリズムがあり、また、光によって分裂は抑制されることを発見した。

審査委員奨励賞

【微生物学】

 この研究では、実際に発光細菌を用いて照明を作ることを目的に実験を行った。実験では発光量と菌密度を測定し、培地条件によって実用性を評価した。

 発光細菌の発光はクオラムセンシングという機構に支配されている。これは細胞密度感知システムともいい、一定量増殖するまで発光を抑制する。ところが、実験結果からは発光系と増殖系は関係していないことが分かった。つまり発光細菌にとって住みよい環境でも発光するとは限らないのだ。むしろ逆境でこそ輝く、その逞しさに感服した。実験後に考察を行い、照明として有用性のある培地条件を検討してから、数種類の照明を制作しました。


【電気工学・機械工学】

 東日本大震災以降、海中での探索や調査の必要性が高まっている。そこで、パソコン用のカメラで画像を認識して目的に向かって進んでいく潜水ロボットを作り、放射線探知機を装着し、水の底にある放射性物質からの放射線を調べることに成功した。

 自律して探査を行えるようにするために3軸ジャイロセンサを用い、オープンCVというソフトを利用して画像認識プログラムを開発し、そこにγ線を探知できるシンチレータを搭載した。実験の結果、水中で取得したデータから放射線量の分布も分かりAUVでの自動計測が可能であることを証明できた。


【数学】

 チョコレートゲームとは、様々な形のチョコレートに毒がある部分(苦い部分)を1つ作り、その部分を食べないように二人のプレイヤーが交互に食べて行き、苦い部分を食べてしまったプレイヤーが負けというゲーム。このゲームで、どのようにすれば先手後手がそれぞれ勝つことができるのかを求めた。チョコレートの形によって勝ち方が大きく異なるのがこの問題の面白さだ。

 この研究では、座標が不等式を満たす2つのチョコレート問題に関して、後手必勝の状態を表す公式を証明することができた。