(福島の自然誌:44)多様性を守る 豊かな自然、戦略的に保護を 星一彰 /福島県
地域在来の生物多様性は、すぐれて歴史性のある「自然の遺産」であり、持続性が保証された保全のための道標にもなる。福島県は生物多様性に富んだ場所だ。地域ごとの特異な自然環境を保護することが、多様性保護の重要な戦略となる。
福島県の生物エネルギー源・植物を垂直分布を中心に概観すると、照葉樹林帯、落葉樹林帯、針葉樹林帯、高山帯と変化に富んでいる。また多くの低層、中層、高層湿原が各地に分布、特異な植物群落が見られる。
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浜通りは照葉樹林帯で、カシ、シイ類が多く、現在は二次林の雑木林になっているが、神社仏閣付近は照葉樹が多い。いわき市には、両生類として県内でもっとも貴重な、日本の分布北限のトウキョウサンショウウオもいる。
中通りと会津は落葉樹林帯で、ブナ帯ともいわれ、ブナ類が優占種として目立つ。特に雪という要因に支配され、中通りはスズタケ―イヌブナ群落、会津はチシマザサ―ブナ群落となっている。ダーウィンが明らかにしたように「突然変異」と「自然淘汰(とうた)」という原理の組み合わせによって、単純で原始的な生命のフォームから、長い年月をかけて進化してきた。稲作とその文化が、自然条件を無視してブナ帯を北進してきたことが、果たして日本人の生活と文化にとってプラスの役割ばかりだっただろうか。
標高の高い山岳地は針葉樹林帯で、亜高山帯ともいわれる。アオモリトドマツ、コメツガ、トウヒ、クロベなどが分布。吾妻連峰には、日本の分布北限のシラビソ(シラベ)も見られる。会津の帝釈山の急傾斜地など厳しい立地では、コメツガの純林も見られる。飯豊連峰は、あまりにも多い積雪のため、針葉樹林が発達せず、ミヤマナラなどが広く分布している。
針葉樹林は、北国のイメージが強い。林内に残雪が多く、水の安定供給にも役立っている。小鳥の声も豊かだ。東北の最高峰、尾瀬の燧ケ岳はハイマツ群落が多く、高山植物も多い。
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福島県という極めて狭い場所だけ考えても、生物多様性は長い年月をかけてはぐくまれてきた自然の生態系自体が持っている性質だ。コントロール可能な対象へ変えようとする人類の衝動は、原生林を切り倒し、人間にとって価値の高い作物の単一耕作を行うという形で地球上の生物多様性を破壊してきた。県内各地のブナ原生林などは、1970年代まで皆伐が進められてきた。
人類は現在、このような愚行のしっぺ返しを受けつつあるように思われる。地球温暖化による生物多様性の脆弱(ぜいじゃく)化が進行している。今や人類は従来の自然に対する強圧的態度を改め、生態的多様性の中に自らの未来を託すよう努力することが望まれている。
(県自然保護協会会長 星一彰)
(2008年2月22日福島版)

