
7代目 7代目のボスだったマッキー(中央)は、いまだにメスザルや子ザルに人気だ=いずれも兵庫県洲本市の淡路島モンキーセンター、森写す
8代目 3カ月でボスの座から引きずり降ろされた8代目のイッチャン
9代目 抗争劇の末に9代目ボスになったアサツユ
兵庫県洲本市にある野生ザルの見学施設「淡路島モンキーセンター」で、8代目のボスザルに昇格したイッチャンがわずか3カ月でその座を追われた。弱い者いじめを繰り返す横暴ぶりに業を煮やした若いサルたちが集団で反撃したのだ。センターで抗争によるボス交代が確認されたのは1967年の開所以来初めて。イッチャンの在任期間は歴代最短だった。(森直由)
センターはニホンザルの保護と農作物の被害防止を狙い、淡路島南東部の柏原山(標高569メートル)で約180匹を餌付けしている。研究者の間では、仲が良くおとなしい群れとして知られる。
ボスは5年ほどで交代してきたが、7代目で32歳のマッキーは15年にわたって君臨。子ザルや弱いサルに優しく、メスにも人気があったため、長期政権になったという。そのマッキーが今年3月下旬、他のサルに餌を奪われるようになった。他地域の集団にみられるような実力行使によるボス交代の気配はなく、マッキーが身を引いたらしい。
センターはナンバー2だった27歳のイッチャンがボスに昇格したと認定。ところが、イッチャンは弱いサルを追い払ったり、エサを奪ったりと、大人げない行動が目立った。メスにも不人気で、毛繕いをしてもらえずに1匹で寝ていることが多かった。
6月21日には、ナンバー4だった17歳のタマゴを押さえ込み、しつこく背中にかみついた。その翌日の午後2時ごろ、タマゴ、ナンバー2で19歳のアサツユ、ナンバー3で18歳のカズの3匹がイッチャンを襲撃。かみつかれるなどして手足や腹に大けがをしたイッチャンは柏原山のふもとにある売店まで逃げてきた。
この争いを、センターの延原利和所長(54)の長女早紀ちゃん(9)が目撃していた。幼いころからサルと触れ合ってきたため、約180匹の大半の名前や顔を見分けられる。「仰向けで無抵抗のイッチャンに3匹が乗って、イッチャンはやられっぱなしだった。近くに石を投げたけど、けんかは収まらなかった」と当時の様子を語る。
間もなく群れに戻ったイッチャンは、すっかりおとなしくなった。センターはこの事件を機に、アサツユが9代目ボスに昇格したと認定。アサツユはメスに人気があり、弱いサルにも優しいという。
延原所長は「平和主義者で優しいマッキーをみんなが支持していたが、乱暴者のイッチャンがボスになり、これまでの秩序が崩れると危機感を募らせた結果の抗争劇だったのではないか」とみる。
○優位示し反撃招く
中道正之・大阪大大学院教授(霊長類学、比較行動学)の話 サル同士のけんかの現場を把握し、順位変動を確認したケースは全国でもあまり例がないはずだ。イッチャンは自分の優位性を示すために、他の順位の高いサルを攻撃したが、反撃されてしまったのだろう。
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