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台風12号、24人死亡・54人不明 紀伊半島、土砂崩れ・氾濫

9月5日付朝刊1ページ 1総合

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河川の氾濫で浸水した集落=4日午後3時32分、和歌山県那智勝浦町、本社ヘリから、小杉豊和撮影

 四国、中国地方を通過した大型の台風12号は4日未明、山陰沖の日本海に抜けた。紀伊半島は記録的な大雨となり、朝日新聞社が集計したところ4日夜までに和歌山、奈良、三重3県で計20人が死亡、51人が行方不明になっている。全国では計24人が死亡、54人が行方不明。台風の動きが遅く、5日も東日本や北海道で断続的に激しい雨が降る恐れがあり、気象庁は警戒を呼びかけている。▼38・39面=土砂と濁流、猛威

 同庁によると4日までの3日間の雨量は奈良県上北山村で1652ミリ、同県十津川村で1303ミリ、三重県大台町で1519ミリを記録。観測史上最大になった。和歌山県新宮市や三重県熊野市では4日明け方、1時間あたり130〜100ミリの猛烈な雨が降った。

 紀伊半島では土砂災害や河川の氾濫(はんらん)が相次いだ。道路の寸断などで捜索・救助活動は難航しており、被害が拡大する恐れがある。

 平野達男防災相は4日夜、「紀伊半島では連絡が取れない場所もあると聞いている。上空から確認することが第一段階。そういったことをやらないと、(被害の)全貌(ぜんぼう)が明らかにならない部分がある」と述べた。

 和歌山県警によると、同県では15人が死亡、28人が行方不明。同県によると、5日午前0時現在、田辺、新宮両市など4市町で約4700人が孤立している。

 同県那智勝浦町では住宅が土石流で流されるなどし、8人が死亡、13人が行方不明。隣接する新宮市でも2人が死亡、6人が行方不明という。田辺市伏菟野(ふどの)地区では4日午前0時40分ごろ、大規模な土砂崩れが起き、民家6軒が巻き込まれた。住人の山本正江さん(69)が死亡、4人の行方がわからなくなっている。

 奈良県五條市大塔町宇井地区では4日朝、数軒の民家が増水した川に押し流され、11人が行方不明になった。3日夜に村営住宅2棟が流された同県十津川村野尻でも、7人が行方不明のまま。同県などによると、県内の死者は計3人、行方不明は23人になった。

 広島、徳島両県では、行方不明になっていた計3人が遺体で発見された。三重県御浜町では4日朝、民家に土砂が流れ込み、女性1人が死亡した。同県紀宝町でも1人の遺体が見つかった。愛媛県では3日に女性1人が死亡している。

 和歌山県のJR紀勢線では橋が流され、御坊―新宮駅間が不通に。復旧のめどは立っていない。

 ●湿った空気、近畿に集中

 8月25日に発生した台風12号が高知県東部に上陸したのは3日午前10時前。日本列島を縦断して4日午前3時ごろに日本海に抜けた後も、広範囲で雨を降らせ続けた。その原因は――。

 台風12号は南の海上にあった当初、太平洋高気圧に阻まれて進路が西側にそれたうえ、大陸から日本海に張り出した高気圧にも邪魔され、北の偏西風にも乗りきれずに北上が遅れた。

 速い時でも1時間に15キロ程度しか進まず、南からの湿った空気が長い間、同じ地域に送り込まれ続けることになり、山地南東側の斜面など、湿った空気がぶつかりやすい場所で雨が降り続けることになった。

 南からの湿った空気は、東側では立ちふさがる太平洋高気圧に沿って、時計回りに吹き込んでいる。西側では、湿った空気は台風に巻き込まれてやや反時計回りに吹き込み続けてきた。

 特に4日は、東側から来た空気と台風が巻き込んだ空気の通り道がちょうど重なる形となった。そのため近畿地方などでは、台風が列島を通過した後でも豪雨となった。(赤井陽介)

 ●首相が対策指示

 野田政権は4日、台風12号非常災害対策本部(本部長・平野達男防災相)を設置した。野田佳彦首相は平野防災相に対し(1)人命救助を第一に、救出・救助をはじめとする災害応急対策に全力を尽くす(2)被害状況の迅速・的確な把握に努める(3)関係省庁は地元自治体と連携し、復旧・復興に政府一丸となって緊張感を持って取り組む――ことを指示した。

     ◇

 気象庁は4日午後、南鳥島近海で台風13号が発生したと発表した。中心の気圧は996ヘクトパスカル、最大瞬間風速は30メートル。

■各地の主な台風被害(4日夜)
 死者行方不明
<奈良>
五條市1人11人
十津川村2人10人
天川村2人
<三重>
御浜町1人
紀宝町1人
<和歌山>
新宮市2人6人
那智勝浦町8人13人
日高川町3人1人
みなべ町1人
田辺市1人7人
有田市1人

突然土砂「あかん」 豪雨、救助の行く手阻む 紀伊半島、台風12号被害

9月5日付朝刊39ページ 1社会

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土砂崩れの行方不明者を捜索する消防団員たち=4日午後2時すぎ、和歌山県田辺市伏菟野、水野義則撮影 台風の影響で川が氾濫し、JR紀勢線の線路が流された=4日午後1時40分、和歌山県那智勝浦町、伊藤恵里奈撮影 上流から崩れた土砂が道路を寸断し、乗用車が埋まっていた=4日午前11時26分、奈良県五條市大塔町、中里友紀撮影

 台風12号による集中豪雨が紀伊半島を直撃し、山あいや海沿いの集落に次々と襲いかかった。和歌山、奈良両県を中心に被害は拡大し、土砂崩れや川の氾濫(はんらん)が救助と捜索の行く手を阻んでいる。▼1面参照

 ●和歌山・田辺

 民家6軒が土砂崩れに巻き込まれ、1人が死亡、4人が不明となった和歌山県田辺市伏菟野(ふどの)地区。「あと5分早く気付いていれば……」。母と息子2人の行方が分からなくなっている打越貴美男さん(48)は、避難所の小学校で涙を流した。

 3日夜、貴美男さんは翌朝部活に出かける次男祐貴さん(16)を駅に送るため、いつもより早めに床に入った。「コロコロ、コロコロ」。深夜、自宅脇の排水路を石が流れる音で目が覚めた。普段水が流れる「ジャー」とは違う、初めて聞く音。「何かおかしい」と思って子どもたちの部屋に行こうとしたが、自宅内に土砂が流れ込んでドアが開かなくなった。窓ガラスも割れた。

 「これはあかん」。懐中電灯を探し、眼鏡もつけず雨戸を開け、隣にいた妻と家を出た。母の綾子さん(88)は祐貴さん、長男の啓太さん(17)は長女の知子さん(14)とそれぞれ一緒の部屋に寝ていた。

 バキバキ――。2メートルほど高い畑への道にたどり着くと、木造の自宅が音を立てて流されていった。「妻を連れて行くのが精いっぱいだった。だけど、無理にでもドアを開けて行っていたら……」

 田辺市消防本部などの約30人が未明から捜索を続けた。打越さん方は大部分が土砂につぶされ、横倒しになっていたが、その中から元気な女の子の声がした。救助隊がのこぎりで木壁を切り、担架を差し入れ、知子さんを助け出した。知子さんに再会した貴美男さんはこう話しかけた。「助けに行かんかってごめん」

 ●娘、結納の日に被災 那智勝浦

 町内の複数の川が氾濫し、8人が死亡、13人が行方不明になった和歌山県那智勝浦町。町北部を流れる那智川の河口付近の集落は道路まで土砂や流木があふれ、川にかかるJR紀勢線の鉄橋は、途中で折れ曲がって断たれた。

 河口付近で理容店を営む平谷徳広さん(39)は午前4時ごろ、犬の鳴き声で目を覚ました。突然、泥水が家の中に入り慌てて家族6人で近くの中学校に避難したという。「店内はすべて泥水につかってしまった」

 川の中流域、市野々地区に住む寺本真一町長(58)は自宅が流され、妻の昌子さん(51)と長女で町観光協会職員の早希さん(24)が行方不明になった。「自宅周辺も川のようになっているようだ」。町役場で災害対策に当たっていた4日午前2時ごろ、携帯電話に昌子さんから連絡があったが、急に通じなくなった。その後、2人行方不明の連絡を受けたという。早希さんは近く結婚する予定で、この日は結納を予定していた。「今思えば、あの電話が精いっぱいやったんやと思う。自分がもしその場におったらという悔いは残る」。寺本さんは声を絞り出すように語った。

 ●道寸断「陸の孤島」 奈良・五條

 土砂崩れや川の氾濫で、1人が亡くなり、11人が行方不明の奈良県五條市。大きな被害があった同市大塔(おおとう)町宇井地区に続く道は、土砂崩れなどで約300メートルにかけて数カ所で寸断され、4日は奈良県警などが現場に到着できなかった。

 「えらいことになっとる。宇井のほうは集落がないぞ」

 五條市役所大塔支所には4日午前7時ごろ、宇井地区の近くに住む男性職員から第一報が入った。

 県警などは、現地入りを目指したが、拠点となる大塔支所から宇井地区につながる国道168号の土砂崩れで、現場に入れなかった。同市消防団副団長の川口健さん(61)は「現場は陸の孤島だ。現場まであと少しだったが、もどかしい」と話した。

 県警、陸上自衛隊、市消防本部は5日早朝から計80人態勢で現地に向かう。

 ●夕食時襲われ 十津川

 木造2階建ての村営住宅2棟が倒壊、住人1人が死亡し、7人が行方不明になっている奈良県南部の十津川村野尻地区。村営住宅で被災し、3日夜に和歌山県田辺市の病院に運ばれた浦上恵美さん(34)は、救急車に同乗した義姉(44)に当時の状況を語った。それによると、3日夜、家族4人で夕食を食べようとしていたところ、突然家ごと濁流に流された。恵美さんは何とか自力で家の外にはい出したという。小学生の長女桃加さん(9)は無事だったが、夫の圭三さん(33)と小学生の長男の和哉さん(11)が行方不明のまま。恵美さんは義姉に「ごめんな」と疲れ切った様子で話したという。


濁流猛威 堤防整備、着手まだ 有数の多雨地帯・紀伊半島、台風12号被害

9月5日付朝刊38ページ 2社会

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旧熊野大橋を越える熊野川の濁流=4日午前7時、和歌山県新宮市下本町、杉山敏夫撮影 川のようになった道路をロープをつたって渡る人たち=4日午後2時50分、同県那智勝浦町

 険しい山々が連なる紀伊半島は、日本有数の多雨地帯としても知られる。特に今回被害が相次いだ奈良県十津川村や和歌山県新宮市がある熊野川流域は、年間平均雨量は約2800ミリと全国平均の1・6倍に上る。

 南に突き出す地理的な要因から、過去にも台風被害に見舞われてきた。大きなものが「熊野川大水害」のあった1889(明治22)年の洪水だ。

 国土交通省河川局の資料によると、このときも中国、四国を通過した台風が大雨をもたらし、和歌山県内で1247人が死亡。十津川村では土砂災害で天然ダムが多数でき、死者は168人にのぼった。被災者2691人が北海道の「新十津川村」に移住するきっかけともなった。

 国土交通省近畿地方整備局は、熊野川河口の新宮市と三重県紀宝町の市街地で、100年に1度の洪水(毎秒約1万9千トン)に耐えるよう堤防などを築く計画を持っている。しかし、現状では財政難などから完成のめどは立っていない。同整備局の担当者は「現状では約10年に1度の洪水に耐えられる程度にしか整備されていない」と話す。

 奈良、和歌山両県が管理する熊野川の上・中流域も似た状況だ。和歌山県は新宮市熊野川町で、特に地盤の低い地区の周囲を堤防で囲む計画を立てていたが、着手に向けて準備をしているところだったという。

 ●避難勧告・指示、判断に差 「水量読み切れず」

 今回の水害で死者・行方不明者が出た地域には、市町村長が住民に避難を促す「避難勧告」や、さらに拘束力が強い「避難指示」が出ていなかったところが少なくない。

 和歌山県新宮市では、市街地と山間部で被害が分かれた。熊野川河口に近い市中心部には3日夜に5回に分けて計1万766世帯に避難指示を出した。4日未明に熊野川があふれ、広い範囲が冠水したが、市によると死者・行方不明者は確認されていないという。

 一方、土砂崩れで2人が死亡、2人が行方不明になっている同市南檜杖(みなみひづえ)地区には避難勧告・指示は出なかった。市防災対策課の井上登課長は「これまでの水害の経験からは、水量、水位の変化を読み切れなかった」。

 死者・行方不明者が多数出ている同県那智勝浦町では、6人が亡くなった井関地区に避難勧告は出していた。しかし、行方不明者が出ている市野々地区には出ていなかった。

 同地区には那智川の水位計がなく、現地職員と連絡をとりながら検討を進めていたが、避難勧告などを出す前に被害が出たという。町総務課の田代雅伸主幹は「台風本体が通った後なので、通常では考えられない雨量を見越しての判断は難しかったと思う」と話した。

 ●関東・北海道でも被害

 大きな被害を受けた東海・近畿地方のほか、群馬、山梨両県や北海道などで土砂崩れや家屋浸水などの被害が出た。

 静岡県では、約3600世帯1万1100人に一時避難勧告が発令された。土砂崩れや倒木で、静岡市葵区の県道などが寸断され、井川地区の331世帯604人が孤立状態となった。島田市や藤枝市などでも道路が崩れたり橋が流れたりして、少なくとも計66人が孤立状態となった。

 前橋市では4日午前1時10分ごろ、上大屋町や樋越町の一帯で突風が発生。群馬県によると、民家6棟で瓦が落ち、物置が飛ばされたり、木々やトラックが倒れたりした。

 山梨県では4日午前、道志村中神地地区や早川町雨畑で土砂崩れがあり、住宅計3棟が半壊・一部損壊した。北海道では深川市や岩内町などで計19戸が床下浸水した。

 東京都日の出町では4日午後10時35分ごろ、圏央道の日の出インターチェンジ付近で土砂崩れがあったが、車などへの被害はなかった。

■最近の主な台風被害(内閣府などの資料による)
 死者・不明者被害状況と特徴
【台風10号】(2003年8月)19人高知県や兵庫県、北海道に上陸。35都道府県に被害をもたらす。北海道で10人死亡
【台風18号】(04年9月)45人九州北部を横断。最大瞬間風速が各地で50メートルを超える。山口県で23人が死亡
【台風21号】(04年9月)27人九州から四国、近畿、北陸、東北地方を通過。愛媛県で14人、三重県で9人が死亡
【台風23号】(04年10月)98人高知県から近畿、中部・関東地方を通過。京都府舞鶴市や高松市などで1日あたりの降水量記録を上回る
【台風14号】(05年9月)29人長崎県に上陸後、日本海を通過。宮崎県で13人が死亡。多数の高齢者が土砂災害に巻き込まれる
【台風9号】(09年8月)27人紀伊半島から東海、関東地方周辺を通過。兵庫県佐用町で約20人が犠牲に

土砂崩れ「深層崩壊」か 岩盤ごと民家襲う 台風12号被害の和歌山・奈良

9月6日付朝刊2ページ 2総合

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住宅(中央左)が多数巻き込まれた土砂崩れの現場=4日、和歌山県田辺市伏菟野、本社ヘリから、小杉豊和撮影

 紀伊半島を中心に大規模な土砂崩れを引き起こした台風12号。和歌山県では、岩盤から崩れる「深層崩壊」が起き、被害を広げた可能性が指摘されている。同じような危険地域は全国に点在するが、メカニズムは未解明なところが多い。

 和歌山県中西部の山間地にある田辺市伏菟野(ふどの)地区は、曲がりくねった川沿いの両岸に数十戸の集落や田畑が広がっていた。しかし、4日未明、背後の山が一気に崩れ落ち、計6軒の民家を押しつぶした。

 「木が倒れた状態ではなく、地面に立ったままの状態で山から流れてきた。見たことのない崩れ方で、山の深いところまで削られている感じだった」。伏菟野地区の谷口順一区長(62)は取材にこう証言した。住民らによると、山が崩れたのは、豪雨が続いていた4日午前0時半ごろ。高さ250メートルほどの山が頂上からすそ野まで幅数百メートルにわたってえぐり取られるように崩れ、400〜500メートル離れていた民家をのみ込んだ。

 5日も土砂や木材を撤去する作業が続けられたが、今も4人が行方不明となっている。

 和歌山地方気象台によると、伏菟野地区に近い観測点での8月の平年降雨量は234ミリ。しかし土砂崩れが起きた当時、8月31日の降り始めからの総雨量は、平年の3カ月分を超える約750ミリに達していた。

 5日昼、被害状況を把握するため現場を訪れた国土交通省の鈴木和弘・災害査定官は「こんな崩れ方の現場は初めて見た。深層崩壊の可能性もある」と指摘した。深層崩壊は、斜面の土部分だけでなく、下の岩盤ごと崩れてしまう土砂崩れ。「地質や斜面の傾斜を調べたい。異常な量の雨により、引き起こされたとみられる」と話した。

 深層崩壊の可能性がある現場はほかにもある。10人が行方不明になっている奈良県五條市大塔町宇井地区は、川の対岸の斜面が、横幅約200メートル、高さ約150メートルにわたって崩れた。山頂からすそ野までが一気に深く削り取られたような跡が見られる。奈良県砂防課は「深層崩壊の可能性は否定できない」としている。

 ●長雨、地中深くに浸透

 深層崩壊は、地盤もろとも大規模に崩れる山崩れや地滑りのことだ。崩れる土砂の量が10万立方メートル以上、時には1億立方メートルと大量で、被害が大きくなりやすいのが特徴だ。京都大の釜井俊孝教授(応用地質学)は「雨水が地盤の割れ目を通して地中深くまでしみ込むと、岩や土の間が水圧で押し広げられてくっついている部分が減り、すべって崩れやすくなる」という。

 今回、深層崩壊が起きていたとすれば、京都大の松浦純生教授(地滑り学)は「ゆっくり北上した台風で、雨が長く続いたことが大きい」と話す。ゲリラ豪雨のように短時間での降水量が多い場合でなくても、雨の総量が多くなると、深層崩壊の危険性が高くなると指摘する。

 松浦さんは「地中のかなり深くまで、水がタプタプの状態になっているはず。水がはけないうちにまとまった雨が降ると、また深層崩壊が起きる可能性がある」と指摘する。今回被害を受けた場所の近くや、雨が多かった割に、川の水の量が少ないような場所は、特に注意が必要だ。

 東日本大震災後に多発する地震との関係はどうか。東京電機大の安田進教授(地盤工学)は「地震の影響で亀裂が入ったり、ゆるんだりした地盤に雨が降ると地滑りを起こしやすい状態になる。中には深層崩壊のような大規模な崩壊もあるだろう」と話す。

 ●危険地域、全国各地に

 国土交通省は昨年8月、深層崩壊の発生頻度を予測した全国地図を初めて作り、公表した。各地で豪雨が相次いでいるため、警鐘を鳴らすのが狙いだった。

 独立行政法人・土木研究所の小山内信智・土砂管理研究グループ長によると、深層崩壊は、山が急だったり、地質がもろかったりする地点で多い。

 奈良、和歌山両県などの紀伊半島中南部は、明治以降に深層崩壊が確認された122カ所のうち、3割近い34カ所を占める。同半島から四国、九州南部へと西日本を貫く日本有数の断層帯「中央構造線」が走り、1500メートルほどの山が連なる。プレート(岩板)同士がぶつかり合って、地中深くの地盤に割れ目などの変化が多いとされる。

 危険地域は各地にある。過去には宮崎県で17カ所、山梨県で14カ所などと発生が確認されている。2005年に土砂が川をせき止めた宮崎県美郷町の「耳川天然ダム災害」や、1997年に死者21人が出た鹿児島県出水市の「針原川土石流災害」は典型例だ。

 研究者らは、地表面の微小な地形の変化などから大まかな危険地域の予測地図を作ったが、発生のメカニズムは複雑で、具体的にどの場所で起きるかまでは予測するのは難しい。国交省では、より小さな流域や渓流レベルでの発生頻度を予測する研究を進めている。

 栗原淳一・砂防計画調整官は「本格的な研究が進んだのはここ10年ほど。現段階では、体の表面を見て、どこが悪いか調べているようなものだが、データを蓄積して精度を上げていくしかない」と話す。

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