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(変わる産業地図)黒衣で健在、電子部品 スマホ支えるお家芸

4月4日付朝刊7ページ 1経済

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米アップルのスマートフォン「iPhone」の多彩な機能も、日本企業の電子部品が支えている=大阪市北区のauショップ

 スマートフォン(多機能携帯電話)の代名詞ともなった「iPhone(アイフォーン)」。製造元の米アップルが1月、主な部品調達先や製造委託先を初めて公表した。全156社のうち、日本勢は30社以上。そんななか、「リストに社名がないが大丈夫か」と株主らから問い合わせが相次いだ企業がある。液晶ディスプレー周辺の電子材料を扱う大阪市の日東電工だ。

 偏光フィルムやタッチパネルに使う透明導電性フィルムで高いシェアを持つ。液晶の製造や組み立て段階で使われるが、完成品メーカーとの直接取引でないため、リストから漏れたようだ。武内徹取締役は1月下旬、四半期決算の会見で「スマートフォンの構造」と題した1枚の紙を配布。「理解を深めていただきたい」と語り、自社フィルムの重要性をアピールした。

 アップルのリストには、パナソニックやソニー、東芝、シャープなどの電機大手に加え、TDKや村田製作所、ローム、オプトレックス(現・京セラディスプレイ)などの部品専業メーカーも並んだ。電気をためるコンデンサーや電気信号を整えるコイルなど各分野で高い世界シェアを持つ企業ばかり。多くの黒衣役が商品の魅力を支えている。

 テレビ事業の不振でパナソニックやソニー、シャープは2012年3月期の純損益が巨額の赤字になる見通しだが、電子部品業界は今も強みを発揮する。専業大手では売上高営業利益率が10%前後の社も多く、ほとんどが5%に満たない電機大手を大きく上回る。

 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、電子部品の世界生産額は12年が前年比2%増の17・8兆円で、日系企業は同2%増の7兆円を占める見通しだ。国内生産額は1991年の4兆円が11年には2・4兆円に縮小している。円高に加え、テレビなど完成品での日本勢の苦戦も影響しており、各社は海外生産を増やすなどの対応をとっている。

 ●「次」にらみ、韓国勢と火花

 「スマホの次」をにらんだ動きも進む。

 村田製作所は3月、半導体製造大手のルネサスエレクトロニクスから無線通信の電波を送信する部品事業を買収した。自社が得意な受信用アンテナや、必要な電波だけを取り出すフィルターなどと組み合わせ、「送受信の多様なニーズに応える」(広報)ためだ。エアコンや照明を無線でつないで省エネを図るスマートハウスも視野に入れる。

 モーター分野では、1月に東京ビッグサイトであった電気自動車(EV)の技術展示会で、価格が高止まりしているレアアースを使わない日本電産のSRモーターに関心が集まった。

 パソコンなどに使うハードディスク駆動装置用の精密モーター首位で、世界8割のシェアを持つ同社は早くから自動車や産業用大型モーターにも着目。SRモーター技術が強い米電機大手のモーター部門を10年に買収し、13年にも自動車向けに量産する計画だ。

 業界の今後の課題は、韓国勢の攻勢にどう対処するかだ。

 サムスングループの電子部品会社、サムスン電機は3月、精密モーターのアルファナテクノロジー(静岡県)を買収。韓国語だけの発表だったが、日本電産を頂点に日本が圧倒的に強い領域にくさびを打った。サムスン電機は近年、電子機器に欠かせない積層セラミックコンデンサーでもTDKや太陽誘電を抜き村田製作所に次ぐ2位に。業界関係者は「日本からの人材獲得も含め攻勢を強めている」という。

 ●「軽薄短小」幅広い用途

 電子部品の用途は電気製品から自動車、エネルギー分野まで幅広い。手がける企業のルーツは様々だ。

 最大手の京セラや、村田製作所はセラミックスを使った製品から事業を始めた。セラミックスは日本の焼き物の歴史に連なるもので、京都に有力企業が生まれたのも偶然ではない。

 TDKは日本で発明された磁性素材「フェライト」を事業化するために設立。ロームは抵抗器から半導体に、日東電工は絶縁材料から工業用テープ、光学フィルムへと領域を広げてきた。日本電産はモーター技術を軸に、積極的な企業買収で規模を拡大中。ラジオ用スイッチから始めたアルプス電気は、電子機器や自動車のスイッチが強みだ。

 各社はラジオ、テレビ、パソコン、携帯電話などの栄枯盛衰も見守ってきた。新技術の研究にも余念がない。ネットワークにつながった家電や、エネルギーを効率的に使う住宅など次世代の「スマート」な製品でも重要な役割を担う。(山村哲史)

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