朝日教育講演会、参加者に感動の輪広がる
93歳の教育研究者、大田堯さんを迎え「映画と講演の集い」

 戦前戦後を通して日本の社会と人間を見つめ、教育のあり方を問い続けている93歳の教育研究者、大田堯さん。その歩みとさらなる夢への挑戦を描いたドキュメンタリー映画「かすかな光へ」を鑑賞し、大田さんの話を聴く朝日教育講演会(朝日新聞社、朝日学生新聞社主催)が11月5日、大阪市北区堂島浜2丁目の中央電気倶楽部で開かれた。約350人がつめかけた満員の会場で、大田さんは、「教育とは、人と人の響き合いから生まれるアートであり、ドラマだ。だから、成果をテストではかることなどできない」などと語った。

 上映時間84分の映画を見終えたあと、講演は氏岡真弓・朝日新聞編集委員(教育担当)を聞き役に対談形式で進められた。

 東京大学教育学部長や都留文科大学長、日本教育学会長を務めた大田さんは、「教育は子どもたち一人ひとりのユニークな能力が花開くよう介添えをするものであるべきで、画一化や同化を押しつけてはならない」と主張。「今の子どもは、危険だからと山へも川へも入れてもらえない。大人になるのに欠かせない遊びがない。学習は学校だけでするものではないのに、自然を取り上げたことを大人として申し訳なく思う」と話した。

 東日本大震災については「人間がモノ、カネに支配され、命が犠牲になる兆候は1980年代から始まった。マネー社会の行き着いた先が原子力発電所だ。モノ、カネより命を尊重する社会をどうやったらつくれるのか、みんなで考えないといけない」と述べた。

 対談が終わると、多くの聴衆が立ち上がり、退席する大田さんを拍手で見送った。

 参加者から回収したアンケートは194枚にものぼった。「大田先生のみずみずしい感性に圧倒されました」「教育に携わる一人として、気持ちも新たに子どもたちの支えになりたい」「都留文科大の教え子です。当時から全くぶれない先生の教えを、教師として生かしていきたい」「心にしみることばかりで、感激でいっぱいです」「映画の中の大田さん、講演中の大田さんの言葉一つひとつが心に残りました」「もっと早く先生に出会っていたかった。先生のかすかな光をめざして、出来る範囲でぼつぼつとがんばっていきたい」などと、前向きな感想が数多く寄せられた。

 映画「かすかな光へ」は全国各地で自主上映の輪が広がっている。問い合わせはウッキー・プロダクション(03・5213・4933)へ。