

●蚤(のみ)はあるけどヒトデにはないの
◇ののちゃん 野球(やきゅう)で、9回裏(うら)に押(お)し出しのフォアボールでサヨナラ負けした投手に、解説(かいせつ)者が「蚤(のみ)の心臓(しんぞう)が弱点(じゃくてん)」と言ってたけど、そもそもあんな小さな虫にも心臓があるの?
◆藤原先生 蚤は昆虫(こんちゅう)の一種で、昆虫には心臓があるわ。同じ蚤でも水蚤ならミジンコと読み、昆虫に近い動物で微塵子(みじんこ)とも書くほど小さいけど、体が透明(とうめい)で心臓が見えるよ。
◇のの 知らなかった!
◆先生 家の中には水道やガスなどの管(くだ)があるね。動物の体も似(に)ていて、進化の初めにできたのが、口からお尻(しり)につながる消化管(かん)。食べなきゃ生きられないもんね。やがて、消化管が吸収(きゅうしゅう)した栄養(えいよう)を体中(じゅう)により効率(こうりつ)的に運(はこ)ぶために血管ができたの。
◇のの 運ぶといっても、管があるだけじゃ中のものは動かないよ。
◆先生 そうね。消化管の場合も、食べた物が川のように低い方へ「流れる」わけじゃないのよ。多くの動物では消化管に高低の差(さ)はあまりないし、口の方が低い姿勢(しせい)のときに逆流(ぎゃくりゅう)しては困(こま)るしね。だから胃(い)や腸(ちょう)が動いて食べ物を後ろに運ぶの。
◇のの え、そうなんだ。
◆先生 チューブ入りのゼリーをしごいて出すような動きをするのよ。血管も似ているわ。今度、チョウの幼虫の背中(せなか)を見てごらん。人でいえば背骨(せぼね)の位置(いち)に血管が通っているのが透(す)けて見え、あちこちでふくれたり縮(ちぢ)んだりしているよ。その動きが体の後ろから前へと波のようにくり返し伝わって血液(けつえき)を運んでいるの。
◇のの 来年の春、ゼッタイ見る。
◆先生 動物も植物も、進化のはじめには、体の中に場所ごとの違(ちが)いはあまりなかったの。しだいに場所による違いが大きくなる「分化(ぶんか)」が進んだのよ。消化管も、ただのパイプみたいだったものが食道や胃、腸へと分かれて役割(やくわり)を分業(ぶんぎょう)したわけ。
◇のの 心臓も同じなの?
◆先生 血管全体のうち長い区間が血を送るために動く動物がいる一方、動く区間が短く、そのかわりダイナミックな拍動(はくどう)をする動物も進化して、袋(ふくろ)のような心臓もできたの。心臓がいくつもある動物もいるよ。
◇のの え、ドキドキしちゃうね!
◆先生 ミミズにはたくさん、イカやタコにも三つの心臓があるの。
◇のの ほんと? さっそく台所で解剖(かいぼう)してみようっと。
◆先生 いろんな体のつくりの動物たちが、それぞれ長い歴史(れきし)を生き抜(ぬ)いてきたの。「多様性(たようせい)」と言って、進化にはただ一つの正解(せいかい)はないのよ。なんだか、人生みたいね。
◇のの お、今日はなんか深(ふか)い。
◆先生 ヒトデやウニには、そもそも心臓がないの。管の中身をどう運んでるのかナゾだけど、ま、ハートがなくたって生きていけるのよ。
◇のの それってイミが違うよ、「ヒトデなし」になっちゃう!
(取材協力=神戸大・竹田真木生教授、東京大・赤坂甲治教授、京都大・佐久間正幸教授、構成=武居克明)