朝日新聞紙面審議会

 朝日新聞の紙面について議論する本年度第2回紙面審議会が1日、東京本社で開かれた。7月21日投開票の参議院選挙の報道を主なテーマに、読者の視点で議論をした。

 【2013年度第2回審議会】(2)参院選

情勢調査、投票行動に影響は――奥委員

 奥委員 終盤の情勢調査の結果が18日朝刊に載った。各党の獲得議席の推計を上限、中心、下限の数で示していたが、選挙結果はその範囲に収まっていた。正確すぎると、投票行動に影響が出るのではないか。

 中西豊樹・世論調査部長 よくそういう指摘を受けるが、今年3月末に朝日新聞が行った面接調査を分析する限り、情勢調査報道が投票行動に大きな影響を与えたとは言えない、という結果が出ている。昨年の衆院選で「自民が勝ちそうだ」という予測を読んだり見たりしたと答えた人に、その影響で投票に行くか行かないか、投票先を変えたかを聞いてみたが、いずれも変えたという人はわずかだった。

 奥委員 終盤の情勢調査では自民に投票するという人が、70歳以上が52%に対し、20代で54%、30代が55%と若年層で高まっており、その理由を経済政策への期待としているが、果たしてそうなのか、もう少し多面的に分析できないか。

 中西世論調査部長 なぜ、若年層が自民に期待するのか、その背景を探るのは重要だと思う。ただ、電話での世論調査や出口調査は、質問数が制約され、分析が難しい。そこで今年秋に20代に対象を絞った郵送調査を予定している。質問数を増やし、質問文を工夫することで深い分析をしたい。

 湯浅委員 ヤフーがビッグデータを解析して分析した予測はかなり正確だった。新聞社は総力を挙げて予想をしているが、費用対効果を考えると、実際に有権者の肉声を聞くことでしかわからないものに重点を置くことなどは考えられないか。

 中西世論調査部長 今回は予測がしやすい選挙だった面もある。参院選は候補者より政党で選ぶ傾向があって当てやすいが、衆院選の小選挙区では党の優劣と候補者の当落が必ずしも一致しない。ビッグデータの分析に関心はあり、外国の実例も調べているが、当面は今の方法を続けることになるだろう。

新聞の「中立・公平」過剰では――中島委員

 中島岳志委員 21日の1面の写真は、無所属の山本太郎さんと緑の党から比例区に立候補したミュージシャンの三宅洋平さんによる東京・渋谷の「選挙フェス」だった。しかし、写真説明は日時と場所のみ。これはニュースなのか、イメージ写真なのか。

 杉浦編成局長 まさにニュース写真としての扱いだ。ただ、公職選挙法では、選挙報道における評論の自由が保障されている一方で、選挙の公正さを害してはならない、ともされている。この観点から、この写真に限らず、他の陣営であっても候補者名は出せなかった。

 中島委員 ネット選挙が解禁されて、既存のメディアにとっても重要な転換点となる選挙だった。投票日が近づくにつれて有権者の関心が高まるのに反比例するように、テレビや新聞の報道には規制がかかっていく。しかし、ネットメディアはこうした規制がかからず、そこではフリーのジャーナリストがどんどん発信している。特にネット報道に接する機会の多い若者は、新聞報道にしらじらしさを感じただろう。選挙における「中立性」「公平性」とは何か。新聞は過剰に制限をかけていないか。再考すべき時期がきているのではないか。

 杉浦編成局長 時代や環境が変わったことは認識している。朝日新聞もデジタル発信をしている。何が求められているのか、どこまで報道できるのか。冒頭でも説明したが、抜本的に考えていきたいと思っている。

 吉田慎一・編集担当 新聞にとって国政選挙は社外からの協力も得て総力で取り組む最大の取材対象だ。今回も今後を決定づける節目とみて、とりわけ政策報道に力を入れてきた。その姿勢は評価していただいた。ただ、取材陣から「過去に通用した選挙を見る枠組みが、もう機能しなくなった」という声が上がるほど有権者は流動化してきた。特に若者がますますとらえにくくなり、ネット選挙をどう報じるかという課題も絡んできた。選挙結果は自民党の「1強支配」になったが、社会内部では解明しきれないほどの構造変化が起きていると感じる。今日の議論を踏まえて、今後の報道の出発点としていきたい。


第23~24期紙面審議委員


     湯浅 誠 委員
 反貧困ネットワーク事務局長。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。

 

     奥 正之 委員
 三井住友フィナンシャルグループ会長。44年生まれ。日本経済団体連合会副会長。国際部門の経験が豊富。全国銀行協会会長なども務めた。

 

     斎藤 美奈子 委員
 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

     中島 岳志 委員
 北海道大学大学院法学研究科准教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。