朝日新聞紙面審議会

 朝日新聞の紙面について読者の視点から議論する本年度第3回紙面審議会が10月28日、東京本社で開かれた。消費税の増税決定をめぐる報道を主なテーマに、4人の委員と話し合った。

 【2013年度第3回審議会】(2)特定秘密保護法案

「知る権利」侵害、危機感もっと――斎藤委員

 斎藤委員 相当紙面を割いて、色々な形で報道されているが、何でこんなに印象に残らないんだろう。社会に危機感が浸透していっていない。内容ではなく、伝え方の問題が大きいのではないかと思う。「知る権利」が侵害されると聞いたときに、色々なことを一気に想像しうる読者はいいが、今はそうはなっていない。法案のことを知らない読者が多いだろう。そのなかで法案の閣議決定を、大きく紙面化した10月26日朝刊はいい。朝日も「やるときはやるじゃないか」と思った。社説で、はっきりと「反対」と打ち出したのはよかった。

 杉浦編成局長 異様なことが起きているときに、それを紙面で伝えるには、通常とは違う構成が必要だ。閣議決定時の紙面については、相当意識した。法案の細部を伝えることが重要だと考え、記事で伝えるのと同時に法案の全文を載せた。私たちは、この法案は知る権利や報道の自由の根幹にかかわる重大な問題だと思っている。一方、日本版NSC(国家安全保障会議)や集団的自衛権の問題などとからめて、法案そのものへの反対を強く打ち出していないメディアもある。10月に出した日本新聞協会の今回の法案に対する意見書では、「強い危惧を表明する」という表現だった。朝日新聞としては、今後も審議の過程や問題点をしつこく報道していく。

 斎藤委員 この件に関しては、新聞・テレビの報道機関は横断的なキャンペーンをはらないといけない。当事者意識が希薄なのではないか。もっと騒いで報道してほしい。

 中島委員 昭和史を研究してきた人間としては、秘密の問題だけに限定せずに論じていってほしい。恣意(しい)的な解釈を許すような法案ができた後、徐々に徐々に担っていく人が変わるとどうなっていくか。治安維持法などは、当初はそういうつもりでなかったが、恣意的な解釈を許すがために大きな問題になっていった。こうした様々なものが昭和史のなかにある。今回の問題に限定せずに、構造の問題として捉えた方がよい。オピニオン面などで歴史学者に登場してもらい、そういう観点から、今の法案を見てもらえないか。


第23~24期紙面審議委員


     奥 正之 委員
 三井住友フィナンシャルグループ会長。44年生まれ。日本経済団体連合会副会長。国際部門の経験が豊富。全国銀行協会会長なども務めた。

 

     斎藤 美奈子 委員
 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

     湯浅 誠 委員
 社会活動家。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。 08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。

 

     中島 岳志 委員
 北海道大学大学院法学研究科准教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。