朝日新聞紙面審議会

 朝日新聞の紙面について読者の視点から議論する本年度第3回紙面審議会が10月28日、東京本社で開かれた。消費税の増税決定をめぐる報道を主なテーマに、4人の委員と話し合った。

 【2013年度第3回審議会】(3)地域報道

成熟社会への試み、発信を――湯浅委員

 奥委員 堺市長選では大阪維新の会公認の候補が敗れたことを9月30日朝刊で報じた。記事は無党派層が維新を選ばなかったことを敗因に挙げていたが、もう少し掘り下げた分析を加えても良かったのではないか。

 井手雅春・大阪本社社会部長 敗因は三つあると思う。(1)都構想への支持がなかった(2)大阪市で橋下徹氏の改革がうまくいかないなどで維新への支持が低下した(3)堺市は政令指定市になったばかりで二重行政の弊害があまりなく、歴史とプライドがある土地柄でもある。ところで、大阪府民全体の意識はどうなのか。近く意識調査をし、現状を探る予定だ。

 斎藤委員 JR横浜線の踏切事故の続報「踏切検知器、反応せず」(10月3日朝刊)は、安全対策に注目していた。「美談」として語られがちな話題に対し、重要なポイントをつかんでいたと思う。高齢者が踏切を渡らなければならないことは頻繁にある。事故は高齢化社会の一断面だろう。同じ日の地域版には「JR安全対策 課題鮮明」が載っていた。このような事故そのものへの検証と追及がもっと必要だったのではないか。

 奥委員 センサーは車には反応するのに、人は検知しないという。テクノロジーの進化が生かされていない。悲劇をさけるにはどうしたらよいか、技術面からのフォローもしていってほしい。

 池田孝昭・横浜総局次長 横浜市ではほかにもお年寄りの踏切死亡事故があったばかりで、当初から事故の背景に着目した。踏切は、そもそも車から列車の運行を守ることに重点が置かれている。非常ボタンがない踏切もあり、センサーも不十分だ。研究段階のセンサーについても取材している。踏切という身近な場所で、命がけで人を守るようなことがあってはならないという観点から、さらに報じていきたい。

 湯浅委員 地方の動きを全国版で取り上げるルートがどうなっているか知りたい。低コスト、コミュニティー重視で持続可能な生活モデルは地方に数多いと思うが、NPOなどが地方で実践している試みが、東京の紙面には載らず、地方でも「社会部的事件」に埋没しがちだ。地方の若い記者と話すと実例を知らないこともある。成熟社会の「先行」事例を意識的に集めてくみ上げる仕組みを作り、日本社会のあり方を考える素材を提供してほしい。

 杉浦編成局長 政策課題の具体的な現場がある地方の取材網と東京本社などの政策取材チームとの連携をさらに強めたい。同時に、地方の若い記者を今より早く本社に置き、経済や社会保障などの取材を経験させ、再び地方で取材する人員配置なども考えている。


第23~24期紙面審議委員


     奥 正之 委員
 三井住友フィナンシャルグループ会長。44年生まれ。日本経済団体連合会副会長。国際部門の経験が豊富。全国銀行協会会長なども務めた。

 

     斎藤 美奈子 委員
 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

     湯浅 誠 委員
 社会活動家。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。 08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。

 

     中島 岳志 委員
 北海道大学大学院法学研究科准教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。