朝日新聞紙面審議会

 読者の視点から朝日新聞の紙面について議論する本年度第1回紙面審議会が16日、東京本社で開かれた。集団的自衛権やSTAP細胞などをめぐる報道について、4人の委員との間で意見を交わした。

 【2014年度第1回審議会】(3)人工知能など

人工知能など 軍事との線引き、課題示す――奥委員

 奥委員 将棋電王戦についての「人工知能 次の一手は」(4月15日朝刊)、ロボットを舞台とした「ザ・テクノロジー」の2回連載(4月30日、5月1日朝刊)、「非情世界 信義なき情報戦争/無人機攻撃 深い闇」(5月5日朝刊)は、一連のものとして読むと興味深い。日本はロボット先進国で、グーグルも投資している。民生目的の投資である限り、大きな夢を与えてくれるのかもしれないが、過去の例をみると、ICT(情報通信技術)は、軍事利用で大きく進化してきた。記事が示唆するように、いずれ人類はロボットでも、民生と軍事の線引きの困難さに直面することになろう。

 湯浅委員 私も「ザ・テクノロジー」は、ロボット技術をめぐる国際競争、軍事工学への転用問題にも触れ、考えさせる記事だと思う。

 市川誠一・編成局長補佐 テクノロジーという取材テーマは、どこの部が担当するか決まっていない。アカデミックなところは科学医療部、産業化された後は経済部、軍事技術は政治マターなどと各部にまたがり、みな真剣に追ってこなかった。しかし原発やインターネットに代表される技術は、時に世界の覇権を握ることにつながる。全社的に取材すべきテーマだと捉え直して始めた企画だ。偶然だが将棋の電王戦と「非情世界」で人工知能や無人機の記事が立て続けに出て、テクノロジーがもたらす負の側面について問題提起する結果となった。今後もテクノロジーの可能性に光をあてつつ、その危険性も視野に置いて企画を進めたい。

 中島委員 「『みる・きく・はなす』はいま」シリーズの連載「排除の理由」6回(4月28日~5月3日朝刊)を、非常に興味深く読んだ。特に初回の「Japanese Only/『お断り』ここにも」は、秀逸だった。横断幕を掲げた浦和レッズのサポーターグループを直撃していた。他の報道では知り得なかった、彼らの論理と心情、そこに至るバイアスが分かった。記者の行動力が光る。記事全体の構成も、どこかに敵がいて悪かったというのではなく、あなたの問題でもあり私の問題でもあるという終わり方をしていて見事だった。

 角田社会部長 安倍首相を中心とする「1強時代」の世相や雰囲気といった漠たるものを、丹念な取材で積み上げた事実を淡々と記すことで、読者の皆さんに考えていただく材料を提示したいと考えた。記者が全国を歩き、意見や立場を異にする人ほど積極的に会った。より幅広く関心を持ってもらうため、多くの特ダネ要素も盛り込んだ。幸いにも、読者を始め、こうした企画に厳しい声が目立つネット上でも好反応だった。


第23~24期紙面審議委員


     奥 正之 委員
 三井住友フィナンシャルグループ会長。44年生まれ。日本経済団体連合会副会長。国際部門の経験が豊富。全国銀行協会会長なども務めた。

 

     斎藤 美奈子 委員
 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

     中島 岳志 委員
 北海道大学大学院法学研究科准教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。

 

     湯浅 誠 委員
 社会活動家。法政大学現代福祉学部教授。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。