朝日新聞紙面審議会

 朝日新聞の紙面について議論する本年度第4回紙面審議会が2月24日、東京本社で開かれた。過激派組織「イスラム国」(IS)による人質事件やフランスの連続テロ事件をめぐる報道、戦後70年の連載などをテーマに、読者の視点から意見を交わした。

【2014年度第4回審議会】(3)戦後70年

様々な生き様、丹念に追った――奥委員

 奥委員 1月末に亡くなったドイツの元大統領ワイツゼッカー氏は「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」という名言を残した。未来志向と同様、日本を映し出す「鏡」を見つめることは重要だ。戦後70年第1部「鏡の中の日本」(1月1日~8日)は、個人の様々な生き様を米中韓を中心に丹念に迫った新年にふさわしい企画だ。

 斎藤委員 「戦後70年」には「振り返る」意味と「70年前に終わった戦争に思いをはせる」意味の二つが含まれると思うが、今般の事情を考えると後者の「思いをはせる」方に力点を置くことが必要だと考える。第1部では、文化をテーマに探ったことも面白い。抗日映画や日韓の間をつなぐ書籍の紹介など、広い視野からの検証が興味深かった。第2部の「戦争のリアル」(2月16日~20日)から感じたのは、21世紀を境に、戦争への見方が大きく変わったのではないかということだ。90年代以降、歴史修正主義が台頭してきた過程も検証してほしい。

 中島委員 第2部は非常によく考えられた構成で読み応えがあった。特に1回目の「戦地派遣」の自殺・精神疾患問題は、4回目のひめゆり学徒隊の「語れぬ胸中」と響き合って見事だ。この「リアル」は胸に迫り、ズシンと受け止めた。難しいと思うが、自殺した自衛隊員の関係者へのルポを読みたい。

 沢村亙・GE補佐 例えば今、「国」が歴史の主要なプレーヤーであるかのような見方がある。しかし、70年かけて平和大国を築いたのは国以上に「人」ではなかったか。第1部では歴史における個人の役割に焦点を当てた。一方、70年を経て当時の証言者も減った。戦没者の多くが戦闘ではなく飢えや病気で命を落とした現実を含めて、戦争をめぐるリアリティーの欠如が、保守層を含む社会全体に広がっている課題に第2部で取り組んだ。

 湯浅委員 戦後70年を含めて今回のテーマすべてに関連することとして朝日新聞の「信頼回復と再生」の道筋について触れたい。
 「わたしの紙面批評」(1月20日)で、様々な意見によって視野を広げた個人がより普遍的に説得力を持った言論を展開することができればいいが、それは意見の羅列に終始することと、「紙一重」だとも指摘した。「意見の羅列」にならないために、危機管理的な仕組みではなく、個々の記者や組織の「成熟を促す仕掛け」を、どうつくっていくのか。紙面作りも含めて、その道筋について伺いたい。

 西村陽一・取締役編集担当 「人質事件」では検証報道の重要性を改めて痛感している。現地取材態勢に工夫をこらしつつ、情報の一つ一つを精査する能力を磨かなければならない。検証は続ける。記者と編集者は、戦後70年、ISやテロ、イスラムにかかわる報道ではとくに、歴史、宗教、文化をめぐる不断の勉強が必要となる。それが本日議論になった「補助線」を引く、「文脈」を整理することにもつながると思う。
 ご指摘の通り、「多様な言論の尊重」が「成熟」に向かうか、無味乾燥な羅列に陥るかの岐路にいずれ直面するかもしれない。そこを乗り越えるためにも、登場いただく論者の方々のウィングを広げ、記者も交えた議論をもう一段深めることで、言論空間の内容を豊かにしたい。4月からはオピニオン面を拡充し、「オピニオンとフォーラム」の機能をより強める。「読者やユーザーの方々との共同作業」や「デジタルとの連携」を重視し、社会の課題、生活に密着した話題、日本の将来に関する問題について、多様な声を掲載するだけにとどまらず、問題の解決をともに考えるメディアをめざしたい。こうしたことを次への一つの手がかりとしたいと思う。


第23~24期紙面審議委員


     中島 岳志 委員
 北海道大学大学院法学研究科准教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。

 

     湯浅 誠 委員
 社会活動家。法政大学現代福祉学部教授。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。

 

     斎藤 美奈子 委員
 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

     奥 正之 委員
 三井住友フィナンシャルグループ会長。44年生まれ。日本経済団体連合会副会長。国際部門の経験が豊富。全国銀行協会会長なども務めた。