朝日新聞紙面審議会

 朝日新聞の紙面について読者の視点から議論する本年度第1回紙面審議会が4月30日、東京本社で開かれた。安全保障法制をめぐる報道や4月からの新紙面などをテーマに、4人の委員との間で意見を交わした。

【2015年度第1回審議会】(2)フォーラム面

有識者にない視点、読みたい――湯浅委員

 湯浅委員 フォーラム面はデジタル面との連動を強化し、読者との双方向メディア像を追求している。「格差問題」(4月5日など)は反応もいいようだ。ただ双方向性の点では前進していると思いつつも、内容面で物足りなさが残る。従来のオピニオン欄などで有識者が提示してきた解決策を超えられていない。理想は、有識者が気づかなかったような視点や論点を提示する、ハッとするような死角を突くことではないか。

 市村友一・オピニオン編集長 読者の意見を読み込む中で、記者が改めて問題意識を深め、「ブラックバイト」や「子どもの貧困」の記事に結実したこともある。理想は有識者の気づかない論点を見いだしていくことだがハードルはなかなか高いと感じている。

 中島委員 フォーラム面は有識者とは違う、思ってもみなかった角度が出たときに面白いものになる、そういう欄になるといいなと思う。その点「人間ピラミッド」(4月6日)は面白かった。体育学の識者でなく、現場の指導者、生徒が現場でどんな思いで取り組んでいるのか。この企画の方が面白い。ヘイトスピーチや右傾化も取り上げてほしい。

 斎藤委員 面白い試みだと思う。「格差社会」というテーマも初回にふさわしい。ただ予定調和感がある。もっと大胆不敵な紙面作りをめざしてもいいのではないか。「人間ピラミッド」は、テーマ自体、こういうこともあったのかと新鮮だった。

 湯浅委員 読者の中の1人と記者が徹底的に付き合い、一緒に有識者の所へ行き、現場を歩きながら、独自の解決策を見つけ出す難しさと可能性を追求するような、発見型のルポを読んでみたい。識者の気づかない視点をすぐ提示するのは難しくても、迷いや気づきのプロセスがくっきりと見えると、さらに深まるのではないか。

 市村オピニオン編集長 ある社会福祉専門学校の学生たちから感想文がきた。たとえば、こうした読者と一緒に歩きながら考える、途中経過を見せていくアイデアもある。可視化する手法を考えたい。

 湯浅委員 「折々のことば」(朝刊1面)はとてもいい。視点にユーモアがあり、かつ深い。何を気づかせてくれるのか、今後も楽しみだ。

 中島委員 面白い。筆者の鷲田清一さんの解説が緩く、ユーモアがある。断定せずに余白がすごくあるのがいい。

 阿部毅・文化くらし報道部長 始まって1カ月。ドキドキしつつ見ている。1979年から休載をはさみ30年ほど続いた「折々のうた」の後継シリーズで、筆者の鷲田さんと話し合うなかで、「街中に流通している言葉も含め、それらを手がかりにしたコラム」ということになった。イメージが定着するのに少し時間がかかるかと思う。切り抜いて貼れるノートは10万部余り売れ、増刷している。

 斎藤委員 文化・文芸面が面白い。月曜から金曜まで日替わりで歴史論や人物伝もあり、かなり色々なものを入れていくことができる紙面だと思う。毎日、新しいものが載っている。かなり多様な展開ができる固定欄として今後の展開を期待している。

 西村編集担当 フォーラム面について、読者と記者が現場を歩き発見型の記事に挑戦する、といった面白い提案をいただいた。デジタルのフォーラムページ、読者との車座集会、未来メディア塾のワークショップ、大学など連携の場と相手を広げ、フォーラム機能を持つ双方向型メディアを「社会課題の解決策を読者・ユーザーとともに探る試み」と位置づけ育てていきたい。


第23~24期紙面審議委員


     鈴木 幸一 委員
 インターネットイニシアティブ(IIJ)会長。46年生まれ。日本におけるネット社会の基盤を創った先駆者。東京・上野で毎春、音楽祭を主宰している。

 

     斎藤 美奈子 委員
 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

     湯浅 誠 委員
 社会活動家。法政大学現代福祉学部教授。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。

 

     中島 岳志 委員
 北海道大学大学院法学研究科准教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。