朝日新聞紙面審議会

 朝日新聞の紙面について読者の視点から議論する本年度第1回紙面審議会が4月30日、東京本社で開かれた。安全保障法制をめぐる報道や4月からの新紙面などをテーマに、4人の委員との間で意見を交わした。

【2015年度第1回審議会】(3)統一選など

「地方創生」議論少なかった――中島委員

 湯浅委員 3月13日1面「政活費巡り5千万円修正へ 51人・3会派支出に問題」など、朝日新聞社が全国47都道府県議会で2013年度に政務活動費を支給された約2700人の議員全員の使途について調べた労作で、膨大な資料を解析して政務活動費の闇に切り込んだ功績は大きい。国政レベルとは異なる争点を作りにくい地方選で各地の選挙に横串を入れた。
 その上で、下がり続ける投票率を考えると、同じ厚みで「自治の力」(4月11日夕刊7面など)シリーズの議員・議会版に取り組んでほしかった。問題の多い「ブラック議員」をあぶり出す作業と同時に、地方で成果を上げている「ホワイト議員」を浮かび上がらせるのにさらに、等分の力を割いてほしかった。

 中島委員 議会改革について、「細る地方 求む議員」(2月22日2面)など議論を投げかけたことを高く評価したい。今後も粘り強く展開してほしい。ただ、統一地方選の大きなテーマである「地方創生」についての議論があまりに少なかったのは驚いた。消滅する可能性のある自治体について書かれた「増田リポート」の是非を含め、論壇では活発な議論が展開された。

 渡辺雅昭・地域報道部長 「ホワイト」を浮かびあがらせるべきだとのご指摘はその通りだ。議員の日々の活動を丹念に追うよう心がける。今回も全国自治体議会アンケートを行い、朝日新聞デジタルでは各地の様子を比較できる特集をした。報酬や情報公開の進み具合など民主主義の基礎データを提供することに力を注いだ。その分、地方創生の議論が薄くなってしまったかもしれない。「創生」の言葉は躍っても具体策をめぐる論争は深まっておらず、現場ルポなどは難しかった。これからが本番と考えており、地域面をふくむ朝日新聞全体でフォローしていきたい。

 鈴木委員 4月19日1面「医療被曝(ひばく)抑制へ基準」は、もっと大変で深刻な問題だ。なぜ日本はこんなに医療被曝が多いのか。患者が何度も検査を受けられるからで、日本のように何回も放射線検査を受ける国は少ない。米国はコストも考えて検査を減らしビッグデータとして使い回している。なぜ、日本では、医療情報が個人のものとならないのか。ビッグデータとして利用できないのかという広がりをもった記事にして欲しかった。

 桑山朗人・科学医療部長 日本は医療被曝について基準値がない。より鮮明な画像を撮りたいとの医療者側の考えのもと、放射線量なども医療者側の裁量に任されていた。一方、コストについても国民皆保険なので、受ける側もさほど強く意識していない。記事ではまず医療被曝が多い現状を指摘した。2日後の医療面で患者側に立って考える記事も掲載したが、日本は世界的潮流からみるとかなり遅れている。医療情報のビッグデータ活用についても、日本はまだまだというのは、その通り。そうした視点を踏まえ、紙面化に取り組みたい。

 中島委員 天皇陛下の発言について思うことがある。どういう形で報じるか慎重に考える必要がある。パラオ訪問に際して掲載された「慰霊 36年越しの約束」(4月10日)で元編集委員の岩井克己氏が「象徴天皇のありようとしては、『ご本人の強い希望で』と安易に報じられることには、実は個人的に割り切れない部分もある。時の天皇が『行きたい』と希望すれば海外でもどこでも行けるとなれば、先々、象徴天皇として矩(のり)を越えることにつながりはしないかと」と書いていた。この指摘こそ良識的な態度だと思った。


第23~24期紙面審議委員


     鈴木 幸一 委員
 インターネットイニシアティブ(IIJ)会長。46年生まれ。日本におけるネット社会の基盤を創った先駆者。東京・上野で毎春、音楽祭を主宰している。

 

     斎藤 美奈子 委員
 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

     湯浅 誠 委員
 社会活動家。法政大学現代福祉学部教授。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。

 

     中島 岳志 委員
 北海道大学大学院法学研究科准教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。