朝日新聞紙面審議会

 読者の視点から朝日新聞の紙面について議論する本年度第2回紙面審議会が11日、東京本社で開かれた。戦後70年や安全保障法制などをめぐる報道について、4人の委員との間で意見を交わした。

【2015年度第2回審議会】(2)安倍談話

作成過程、より深い検証を――中島委員

 湯浅委員 安倍談話について8月15日の社説「何のために出したのか」で、「(この談話は)出すべきではなかった」と、朝日が「原点」にこだわった点は正論だと思う。

 中島委員 私も、歴史認識を私物化しようとする首相の姿勢を厳しく批判しており的確だったと思う。

 斎藤委員 6月25日時点の社説で「いっそ取りやめては」としていたのも評価する。8月15日にはきっぱり否定した。朝日はピカイチだった。

 鈴木委員 私は、やや抑制が利いていない印象があった。

 大野博人・論説主幹 社説の基本的スタンスは安倍談話は「出すべきではない」だ。歴史は政治を相対化するが、政治はそれを嫌って歴史を絶対化する。今回の談話は出発点からその側面を持っていた。政治はそんなふうに歴史と向かい合うべきではないと思う。
 「おわび」など、メディアが言葉にこだわるのはおかしいとの批判があったが、それらをまず焦点にしようとしたのは政権やその周辺ではなかったか。多くの人が固唾(かたず)をのんで見守り、出て来たら「心配したほどではなかった」と安堵(あんど)する。この流れ自体がいびつだと考えた。

 中島委員 8月15日、16日朝刊の70年談話関連の一連の記事と社説は、ポイントと問題点を幅広く提示した点を高く評価したい。特に鋭いと感じたのは「座標軸/政治は歴史を変えられない」だ。談話で平和国家としての歩みを「誇り」とする一方、戦後レジームに敵意を示す安倍晋三首相のダブルスタンダードを突いている。談話の作成過程について、有識者会議の何が反映され、反映されなかったかなど、掘り下げてほしかった。

 立松朗・政治部長 談話はどこに視点を置くかで見方が変わる。何が語られたかを提示することを重視した。内容の分析にはなお余地があり、作成過程や保守派がなぜ評価するのかなど今だから分かることを検証していきたい。

皮肉利かせても

 湯浅委員 各方面への配慮を優先させた安倍談話は主張があいまいで具体性に欠けたが、「侵略」「おわび」が入らないかとの懸念を覆した結果、失点は最小限にとどめたと言うべきだろう。こうした文書に対しては、社説は、真正面からばっさり批判するだけでなく、安倍首相の過去の言動と違う内容がなぜ盛り込まれたかなど、皮肉を利かせて論じてもよかった。

 大野論説主幹 社説の表現がきついという指摘は他からもあった。湯浅委員のご指摘のような点はもう少しあってもよかったと思う。

 中島委員 談話に対し、韓国・国民大の李元徳教授が「『アジアに勇気』容認できぬ」(8月16日朝刊)で指摘するように、韓国国民は容認できないものだろう。日露戦争が日本の植民地支配のスタートと捉えられており、領土問題にも大きな意味を持っている。韓国にとっての日露戦争の意味を書いてほしい。

 橋本聡・オピニオン編集長 いま、談話を支える歴史観を識者に論じてもらう記事を計画中だ。明治時代を高く評価し、敗戦に至る昭和前期と切り分ける歴史観について考えたい。


第23~24期紙面審議委員


     鈴木 幸一 委員
 インターネットイニシアティブ会長。46年生まれ。日本におけるネット社会の基盤を創った先駆者。東京・上野で毎春、音楽祭を主宰。

 

     湯浅 誠 委員
 社会活動家。法政大学現代福祉学部教授。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。

 

     斎藤 美奈子 委員
 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

     中島 岳志 委員
 北海道大学大学院法学研究科准教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。