朝日新聞紙面審議会

 朝日新聞の紙面について読者の視点で意見を交わす本年度第3回紙面審議会が1月26日、東京本社で開かれた。昨年11月にパリで起きた同時多発テロや、消費増税に伴う軽減税率をめぐる報道などをテーマに、4人の委員と議論した。

【2015年度第3回審議会】(3)新年紙面など

「18歳像」示せず消化不良――中島委員

 中島委員 新年紙面(1月1日~9日朝刊「18歳をあるく」)は、正直言って面白くなかった。高齢の読者に実像を知らせる点では一定の意味があったのかもしれないが、分析が識者頼りで、全体を通じた18歳像を提示できていない。
 元日の若者座談会では出席者が「今の若者は低成長時代を生きてきたので、リスクに挑戦しない」と指摘しているが、3日の記事では、冒頭でベンチャービジネスに参入する18歳が描かれている。矛盾の両面として分析するなら面白いが、両方がただ投げ出されている。「多様な実像を描き、とらえ方は読者に委ねる」姿勢は逃げではないか。最終回に海外の若者を描くなら、アジアなどじっくり取材し回を重ねた方がよかった。消化不良と中途半端感が残った。

 湯浅委員 18歳については参院選挙前に、主権者教育を特集してほしい。その際には模擬選挙など直接的なものも大事だが、大人の主権者教育である社会教育の現状も含めて、民主主義社会のありよう全体を問うような間口を広げた切り口を望みたい。

 長GE 「18歳」は、一貫性がないなど厳しいご意見の一方で、ネットでは好意的な反響など様々だった。参院選で有権者になる点でまず注目されたが、可能性を秘めた世代だ。社会の幅を広げる可能性をもつという視点で、どんな考えでどんな人たちなのかを伝えようとした。取材記者は若者ではなく30~40代で、枠を設けずに見たままを伝えようとした。記者が何を感じたか毎回入れるとよかったかもしれない。今後も18歳とは何か深めていきたい。
 18歳選挙権に関連しては、憲法学者の木村草太さんとAKB48の人たちと政治を考える企画を昨年(12月22日朝刊)から始めた。今後も充実させたい。

 中島委員 「AKB48」は、知識が豊富な年長の男性が、未熟な若い女性に教えるという構図が気になる。木村さんを批判したいのではなく、この企画の設定におじさん的な欲望が反映されていないのか考えてもらいたい。逆に若い気鋭の女性学者が、おじさんを教えるとどうなるか。そんな記事の組み立てもあるかもしれない。

 斎藤委員 夫婦別姓問題について昨年末に最高裁の「夫婦同姓規定、合憲」の判決が出た(12月17日朝刊)。朝日は昨年の早い時期から多角的な報道で評価したい。「教えて! 結婚と法律」シリーズの11月26日朝刊紙面など、当事者の視点を交えた記事は、意義深い。

 角田克・社会部長 取材は、歴史的な縦軸、世界的動向の横軸の視点でチームで取り組んだ。記者の意欲が非常に高かった。最高裁判決の紙面では、裁判官全員の写真を横一列に並べそれぞれの判断を伝えた。
 司法の可視化は重要だ。当局にもその意識が高まりつつあるので、今後も積極的に取り組みたい。

 斎藤委員 朝日新聞の11月の世論調査では選択的夫婦別姓に賛成が52%で反対は34%。仮に今から選べるとしたら「自分は夫婦別姓を選ぶ」は11%。選ぶ人は非常に少ないとの見方が多いが、私は1割はすごく多いと思う。
 今は95%以上が夫の姓を選ぶ。色んな事情や習慣からだが、年間60万組以上が結婚するうち、6万組以上いる計算だ。別姓が選べぬゆえの事実婚も多い。そこも伝えてほしい。別姓問題は色んな家族、人生があるという多様性に目覚める面もある。

 角田社会部長 確かに1割の評価は簡単には言えない。この問題は家族観や法制など様々な要素が交錯する。別姓にしようとしている人、事実婚の人の生活実態と全体像がわかる記事を適宜出稿していきたい。


第23~24期紙面審議委員


     鈴木 幸一 委員
 インターネットイニシアティブ会長。46年生まれ。日本におけるネット社会の基盤を創った先駆者。東京・上野で毎春、音楽祭を主宰している。

 

     湯浅 誠 委員
 社会活動家。法政大学現代福祉学部教授。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。

 

     斎藤 美奈子 委員
 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

     中島 岳志 委員
 北海道大学大学院法学研究科准教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。