朝日新聞紙面審議会

 朝日新聞の紙面について読者の視点で話し合う紙面審議会が9日、東京本社で開かれました。1989年に発足した紙面審議会は、1面とこの面にあるお知らせの通り、その役割が読者代表であるパブリックエディター(PE)や本社の編集部門幹部らが議論する「あすへの報道審議会」に発展的に引き継がれます。2013年4月に就任していただいた委員のみなさん(鈴木幸一委員は昨年4月から)の議論は今回が最終になります。この機会に、今回の紙面審議会では、4委員に、これまでの紙面審議会の議論も踏まえながら、朝日新聞の現状をどう見るか、今後に望むこと、期待する点は何かについて提言、意見をいただきました。

【2015年度第4回審議会】(4)中庸狙わず、大胆に主張せよ

斎藤美奈子委員

 新聞各紙の論調が二極化してきたと感じる。以前にも増して主張の差が出るようになったのは、部数減少など新聞全体の凋落(ちょうらく)に加え、東日本大震災後、より注目されるようになった原発政策への賛否、安倍政権誕生後は政権に対する姿勢から、旗幟(きし)を鮮明にせざるを得なくなったためではないか。
 それが顕著に表れたのは、(1)原発の再稼働問題(2)特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、安保法制審議(3)米軍普天間飛行場の辺野古移設――をめぐる報道だ。

 「二極化」のもうひとつの側面は、朝日新聞の特徴として、言論の自由に関わる動きへの敏感な反応もあげられる。例えば、松江市の市立小中学校の図書館で、広島での被爆体験を描いた漫画「はだしのゲン」が「描写が過激」とされ、閲覧制限になっていると大きく報じた記事(13年8月17日朝刊)が出色だった。地方の小さな話を大きな問題としてとらえ、続報も出して議論を巻き起こした結果、松江市教委は閲覧制限を撤回した。朝日新聞らしい役割を果たしたと思う。
 高市早苗総務相の放送法に関する発言については、言論の自由に敏感な朝日新聞にしては、扱いが小さい気がする。「いちからわかる! 放送法」(16年2月21日朝刊)は親切な記事ではあったが、今回はそのような「客観的な解説」ですむ話ではないはずだ。
 たとえばTBSやフジテレビの社長も懸念を示しているという目立たない記事(2月25日朝刊、27日朝刊)をドーンと大きく扱ったら、どんな反応が出てきただろうと考える。

 現在は、「どの家庭もどれか1紙をとっている」という「1億総新聞読者」状態ではない。各紙の報道や主張をネットで比較でき、かつその報道内容がSNSなどで共有される「各紙の読み比べ」が加速しつつある。
 1紙に多様な意見が載るのも大切だが、社会全体に多様な意見が存在するほうがもっと大切。記事掲載後すぐに、SNSなどで拡散し、広く吟味が始まる時代だ。朝日新聞に期待するのは、中庸を狙うことではない。オピニオンリーダーとしての役目をより自覚的に打ち出すべきではないか。それに堪えうる記者を何人持てるかも新聞の新しいクオリティーだろう。

 私は朝日新聞の基本的な報道姿勢は支持しているが、「ぬるい」「おそい」「おとなしい」「慎重すぎる」「扱いが小さすぎる」と思うことはよくある。もっと大胆に主張してほしい。見出しも、記事の本質をとらえ、さらに読者の目を引く工夫をしてほしい。



紙面審議委員


     鈴木 幸一 委員
 すずきこういち インターネットイニシアティブ会長。46年生まれ。日本におけるネット社会の基盤を創った先駆者。東京・上野で毎春、音楽祭を主宰している。

 

     湯浅 誠 委員
 ゆあさまこと 社会活動家。法政大学現代福祉学部教授。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。

 

     中島 岳志 委員
 なかじまたけし 東京工業大学教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。

 

     斎藤 美奈子 委員
 さいとうみなこ 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

◇開会日までの東京本社発行最終版を主な対象に討議。写真は池永牧子撮影