朝日新聞紙面審議会

 朝日新聞の紙面について読者の視点で話し合う紙面審議会が9日、東京本社で開かれました。1989年に発足した紙面審議会は、1面とこの面にあるお知らせの通り、その役割が読者代表であるパブリックエディター(PE)や本社の編集部門幹部らが議論する「あすへの報道審議会」に発展的に引き継がれます。2013年4月に就任していただいた委員のみなさん(鈴木幸一委員は昨年4月から)の議論は今回が最終になります。この機会に、今回の紙面審議会では、4委員に、これまでの紙面審議会の議論も踏まえながら、朝日新聞の現状をどう見るか、今後に望むこと、期待する点は何かについて提言、意見をいただきました。

【2015年度第4回審議会】読者と対話しニュースの循環図る

常務取締役編集担当・西村陽一

 紙面審議会が始まった27年前と今日とを比べると、紙の部数は減っているが、デジタル上で私たちのコンテンツに触れるユーザー数は増え続けている。記者にとって、原稿を手放したら終わりという時代ではもはやない。その瞬間から一人でも多くの読者やユーザーにコンテンツを届ける努力を惜しんではならず、読者との対話を継続しなければならない。今はそんな時代だ。

 SNSを通じて拡散した記事の中身がすぐに吟味される時代でもある。だからこそ、コンテンツの価値がますます重要になっている。専門的な知見を持つ記者、取材力・文章力・分析力のある記者、国際体験を踏まえ日本を相対化できる視点を持つ記者、地域にしっかり根を張った記者。こうした記者も含めた多彩な人間を何人擁しているかが問われる時代でもある。言うまでもなくジャーナリズムの強みは最後は人にある。

 毎回のように話題になるフォーラム機能は大きな課題だ。私たちは「多様な言論」をうたっているが、以前ご指摘いただいたように、多様性の中に個性が埋没したり機械的な両論併記に安住したりすることのないよう心がけたい。いま取り組んでいるのは、読者と議論しながら事実を徹底的に掘り下げ、新しいニュースのあり方を探ることだ。ニュース面からテーマが生まれ、紙とデジタルで読者とともに解決策の実践や効果についての議論を深め、再びニュース面へ戻る。そんなニュースの循環を定着させながら「ともに社会課題の解決を考える」というフォーラム機能を高めたい。

 「平成の白虹事件」という言及があった。一昨年の一連の問題の検証と反省を踏まえ、信頼回復と再生を模索してきた私たちへの励ましの言葉と受け止めた。本日の議論を前に、大正デモクラシー時代の朝日のリベラリズムの論調を読み直し、100年前の先輩記者が「新聞と読者の堅固な関係とコミュニティーの形成」を唱えていたことに改めて思いをはせた。言論・報道の自由を守るためにも、強靱(きょうじん)なリベラリズム、価値ある豊かなコンテンツ、堅固なコミュニティーに支えられたメディアを追求していきたい。



紙面審議委員


     鈴木 幸一 委員
 すずきこういち インターネットイニシアティブ会長。46年生まれ。日本におけるネット社会の基盤を創った先駆者。東京・上野で毎春、音楽祭を主宰している。

 

     湯浅 誠 委員
 ゆあさまこと 社会活動家。法政大学現代福祉学部教授。69年生まれ。08年末に「年越し派遣村」村長。09~12年、内閣府参与。08年「反貧困」で大佛次郎論壇賞。

 

     中島 岳志 委員
 なかじまたけし 東京工業大学教授。75年生まれ。専門は南アジア地域研究、日本思想史。05年「中村屋のボース」で大佛次郎論壇賞。

 

     斎藤 美奈子 委員
 さいとうみなこ 文芸評論家。56年生まれ。編集者を経て94年、近代文学評論「妊娠小説」でデビュー。02年「文章読本さん江」で第1回小林秀雄賞受賞。

 

◇開会日までの東京本社発行最終版を主な対象に討議。写真は池永牧子撮影