●市長のいない市、議会のない町村だって選択肢
●サラリーマンや女性が参加しやすい議会に
前回は、自治体を「地域政府」に進化させる「地域連合国家」を提言した。
だが、いくら自立する地域政府といったところで、それを担う人材を育て、機能させる仕組みを整えなければ、いつまでも夢物語のままになる。
「全国のほとんどの自治体議会で、八百長と学芸会をやっている」
政府の地方分権改革推進委員会で、片山善博・前鳥取県知事はこう指摘した。議員と行政側が事前に質問と答弁をすりあわせておき、それを読み上げるだけ。そんな現状への皮肉だ。
反発した議会もあるが、「うちは違う」と言い切れる議会は全国にどれだけあるのか。改革に目覚めた議員が増えてはいるが、議会への住民の視線はまだまだ冷たい。この現状を改めたい。
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北海道栗山町。夕張市に隣接する1万4千人の農業の町に、全国の議会から視察が殺到している。お目当ては昨年5月制定した全国初の議会基本条例だ。
議員間の自由討議や、町長側から議員へ反問する権利を導入した。住民への「議会報告会」を毎年十数会場で開く。議員提案も活発で、この10月には町長がつくった町づくり基本計画への対案までまとめ、審議を進めている。
橋場利勝議長らが改革に乗り出したきっかけは、「議員は当選したらそれっきり」という町民の言葉と、議会が信頼されなければ、将来の負担増を町民には求められないとの問題意識だった。
こうした自治体や議会の基本条例には先例がある。北海道ニセコ町が01年に施行した「まちづくり基本条例」だ。
情報開示を徹底し、町の仕事の立案から評価まで、住民参加を保障する。逢坂誠二・前町長の実践を条例化した。
地図や写真で予算の詳しい使い道を説明した冊子を全戸に配り、住民と意見交換の場を設ける。こんな取り組みは、町長が代わったいまも続く。条例を定めて制度として残した結果だ。
「市長を廃止する」
埼玉県志木市の穂坂邦夫・前市長は在任中の03年、驚くような案を政府の特区に申請した。市長に代わり、議員の中から行政責任者を任命する「シティーマネジャー制」を試みるというのだ。
行政の効率化と議会の活性化が狙いだ。米国では多くの自治体が同様の制度を採っている。「住民による首長選出を定めた憲法に触れかねない」と却下されたが、04年の地方分権改革推進会議の意見書には、導入の検討が盛り込まれた。
栗山町などは、首長や議会が住民を巻き込んで、よりよい自治をめざす。志木市の例は制度を大胆に変えて、新しい自治の形をつくろうという動きだ。
いずれも小さな市や町の試みだが、もっと大きな自治体へも広がりつつある。昨年末に三重県議会が、都道府県で初めて議会基本条例を施行した。栗山町には東京都町田市や千葉県市川市など40万規模の市からの視察もあり、都市部でも条例づくりが模索されている。
日本では、360万人の政令指定市から数百人規模の村まで、首長と議会を選挙で選ぶ「二元代表制」をとっている。だが、財政基盤も地域事情も異なるのだから、制度も多様であってよい。
マネジャー制のほかに、議会が議決と執行の両方を担うやり方も考えられよう。町村が議会を置かず、町村総会で意思決定することは、法改正をしなくてもいまでも可能なのだ。
どんな制度を選ぶかは、住民が地域の事情を考えて決めればいい。多様化するほど、創意工夫がこらされていく。
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自治を向上させるには、多様な人材を公職に登用する仕組みも欠かせない。
地方議会を見渡すと、議員は建設業者や農業者、退職した給与所得者が大半だ。住民の意向が正しく反映される議会構成なのか、疑問がわく。
会社員や公務員が少ないのはハードルが高いからだ。公務員は立候補と同時に失職する。会社員は当選しても、仕事との両立は難しい。職を捨てる覚悟がなければ、立候補すらままならない。
そこで在職中の立候補を認め、当選したら退職するか休職扱いにしておく。兼職できるよう、夜間や休日に議会を開く手もある。女性を増やす工夫もして、一般の住民との垣根を低くしたい。
住民に近い市町村が、福祉や教育など暮らしのことを基本的に担う。力不足のところは、周囲との合併や連携を考えてもいい。そして、都道府県は医療や企業誘致など、広域で実施した方が効率的な分野に責任をもつ。
そのうえで、都道府県にも広域連携や合併の選択肢があっていい。道州制を中央の出先機関として上から区割りするのではなく、地域が自主的に連合していく結果として、道州が誕生する。そんな道筋を提言したい。
こうして地域政府が確立すれば、中央政府の仕事はおのずと限られてくる。
外交や安全保障、温暖化など地球規模での対応が必要な分野。全国的な統一が求められる通貨や金融・通商政策、医療や教育の水準確保、さらには先端技術開発への支援などが挙げられよう。
次週は、こうした仕組みに参加していく市民組織の役割を考える。