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09月23日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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復興支援音楽祭 ゆずと合同練習会

「復興支援音楽祭 歌の絆プロジェクト」の合同練習。
3月2日の本番を前に、宮城と福島の中高生が仙台で初めて顔を合わせた。
それぞれ歌の練習はしてきたが、ハーモニーはうまく響き合うのか。
不安の中で音あわせをしていると、ゆずの2人がそっと……

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生徒たちが作った曲「群青」でスタート 正午前。最初に練習会場入りしたのは、福島から参加する3校。
3校が一緒に歌う「群青」は、南相馬市立小高(おだか)中学校の生徒と
合唱部顧問の小田美樹先生がつくった曲だ。

原発20キロ圏内にある小高中は、現在も市内の別の学校での「仮住まい」が続く。
作曲当時の3年生たちは、いま高校1年生。
音楽祭にも有志が参加する。
元部長の斎藤舞子さんは県立小高商業高校に進学したが、
ここも他校の敷地内に立つプレハブ校舎だという。

「みんなで歌うのは卒業式以来。
いまの高校には合唱部がないし、 歌にふれられるのは本番までの1カ月だけ。
本当に楽しみなんです」

みんな、表情が硬いよ 午後0時30分。
発声練習が始まった。
小高中学校のほか、県立浪江高校、県立相馬農業高校飯舘校の合唱部員がピアノを囲む。
「群青」は、帰れぬ故郷や離ればなれになった友を思う曲だ。

  きっと また会おう あの町で会おう
       僕らの約束は 消えはしない 群青の絆

まずは全員で1回、通しで歌う。

小高中卒業生で高1の村岡みさきさんは
「うるっときた。もう、最初から」

同じ学年だった中島鈴奈(れいな)さんは
「曲がバージョンアップしててすごい。
前より良くなったかも」

午後0時55分。
ひととおり歌を聴いた、指揮者の今井邦男さんが小高中卒業生の方を向いて、
しみじみ言った。

「あなた方、いい詩をつくったね」

合同練習会は1回きり。
限られた時間の中、指導が続く。

「歌詞が届くように、もっとはっきり」
「感傷的な気持ちはあってもいい。
でも、この曲はそれだけじゃないよね」

今井さんはこんなことも言った。

「ぼくもね、よく分かるんです。『あたり前が 幸せと知った』っていう歌詞。
僕は仙台ですけどね。不自由な思いはしましたから」

午後1時30分、仙台市立八軒中学校の部員たちが到着した。
いよいよ、全体合唱の練習だ。

ゆずの2人、そっと登場
午後2時半過ぎ、会場の脇のドアがそっと開いた。
ゆずの北川悠仁さんと岩沢厚治さんが音もなく入ってきた。
ゆずの「友~旅立ちの時~」を歌っている生徒たちは気づかない。
北川さんたちは生徒たちの横顔をみつめている。
練習が途切れるのを待って、すっと2人が生徒たちの前に立った。

北川さん「どうもみなさんこんにちは」

戸惑いながら「こんにちは」とあいさつを返す生徒たち。
びっくりしたのか、声がかすれ気味だ。

「はい、声が小さーい。もう一度。こんにちはーっ」

「こんにちはー」

みんな、やっと声が出た。

「ゆずの北川悠仁と…」
「…岩沢厚治です。よろしくお願いしまーす」

拍手はするものの、生徒たちは誰もはしゃがない。
まだまだ緊張した表情だ。
参加各校の部長たちが順番に学校の紹介をした。
この日の練習に参加できなかった岩手県の釜石高校、高田高校、大船渡高校からは、
ビデオメッセージが上映された。
映像の中で「本番で会いましょう」と手を振る生徒たちに、岩沢さんが両手を振って応えた。

北川さん「この曲をどんなふうに作ったか説明します」 「この曲は、震災直後に作りました。
これからみんな、学校を卒業したりして
会えなくなる人がいると思う。

遠く離れていても歌を通じてつながっている、
そんな思いを確かめてもらいたい、っていう歌です。

みんなの思いを大切にして歌ってもらいたいです。
来ているみなさんにたくさんの感動を与えましょう

岩沢さん「この曲、ぼく知ってます!」 午後2時45分。
最初に、練習の成果を2人に聴いてもらうことになった。
導入のコーラス、ピアノ前奏と続き、ゆずが歌う主旋律に入る直前、指揮者の今井さんが
「この歌詞の部分、歌える人は歌ってください」と、生徒たちに声をかけた。
すると、すぐに手をあげたのは、岩沢さん。

「ぼく!ぼく知ってます!」

表情の硬かった生徒たちが、一斉に笑顔になった。
聴いているだけの予定だったゆずも、一緒に口ずさみ始めた。

ひと通り聴き終えた北川さんと岩沢さんが、
後ろにいたスタッフに頼んでギターを持ち出した。
事前の打ち合わせでは、CDで練習するはずだったのに。
生徒たちは、ゆずのギターに合わせて練習することになった。

ゆずが、目の前で歌い始めた! 「じゃあ、一緒にやろう。失敗してもいいから。
勇気を持って歌ってください」と北川さん。

「顔を見るのが恥ずかしかったら、ぼくのこのへん、胸の辺りを見て歌ってもいいから」
岩沢さんは、ピアノ伴奏の方に視線を送ってタイミングをとっている。

「おかげで、とっても弾きやすい」。伴奏の小田先生は笑顔だ。

「友~、いま君が~、見上げる空は~」

間近で聴くゆずの声量は、マイクもないのに圧倒的だ。
生徒たちは驚いたのか、ちょっと頼りない声になってきた。
最前列の真ん中で歌っていた小高中2年の林崎美紗さんは、ゆずの大ファン。

「ドキドキして、顔なんか見たら声が出なくなりそうで……。
2人の後ろの非常口マークを見て歌いました」

北川さん、ビシバシ指導 「間奏部分、みんな劇的に迷ってるよね、そこをもう一回」
「いまの歌い始めのところ、高音でキツいんだけど、がんばって入ろう」
「音を取るのは大事なんだけど、この曲はどこで盛り上がりたいのか、考えて」
「エンディング部分が弱かったから、もう一回」

北川さんの指導がバンバン入る。
照れくさそうだった生徒たちも恥ずかしがっている場合ではなくなった。
いつの間にか真剣そのもの。
視線も、ちゃんとゆずの2人に集まってきた。

「すばらしい、良くなりました」

合唱曲「友」のOKが出た。

そして、もう1曲の練習が始まった。
北川さんが言った。

「この曲は深く考えないで。思いっ切り、気持ちよく歌いましょう」

音楽祭で会いましょう 午後3時15分。忙しいゆずの2人が、練習を終えなくてはいけない時間が迫る。

「とってもよくなってきました。もう一回、合わせましょう」

身ぶりや手拍子など、2人から次々とアイデアが出る。
人数が少ない男子部員たちもすっかりノッてきた。

「じゃあ、次は本番で。楽しくやりましょう!」

午後3時半過ぎ、予定の時間をちょっぴりオーバーして、合同練習が終わった。
2人を拍手で送ったあと、浪江高校2年の小丸(おまる)美里さんと栃本千佳さんは
「テレビで見るより、かっこよかった。声量がすごかった」と笑顔になった。

小高中2年の海老沢颯太(そうた)君は
「最初は緊張したけど、ゆずにのせられた感じ。
曲は難しいけど、思ってた以上に楽しかったです」

本番は3月2日、仙台市の仙台サンプラザホールで開かれる。
岩手、宮城、福島各県の中高生が参加する。
八軒中学校顧問の大沼結依先生は
「コンクールとは違った緊張感があるようですが、
ゆずとの練習で表情がどんどん変わっていくのが分かりました」と話した。

記事一覧

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「歌の絆プロジェクト」合唱団
福島県南相馬市立小高中学校(卒業生を含む)、福島県立浪江高校、福島県立相馬農業高校飯舘校、
仙台市立八軒中学校、岩手県立高田高校、岩手県立釜石高校、岩手県立大船渡高校

取材:清野有希子、荒ちひろ、杉村和将、神庭亮介、紺野信幸、松本龍三郎
撮影:安冨良弘、佐藤正人、山本和生、小玉重隆、日吉健吾 協力:東日本放送
制作:高橋敦、大西滝子、佐久間盛大
プロデューサー:柏木真

JASRAC許諾番号
9015134001Y45039

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