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映画の旅人

「女の時代」さっそうと 「マルサの女」

脱税と摘発の攻防描く 東京都台東区

写真:「マルサの女」のモデルとなった浅草税務署の元女性調査官に、伝票チェックを再現してもらった=東京都墨田区拡大「マルサの女」のモデルとなった浅草税務署の元女性調査官に、伝票チェックを再現してもらった=東京都墨田区

 「伊丹万作の息子なんだもん、一本でいいから、映画を撮ってほしいの」。妻の願いに、眉間にしわを寄せて笑っていた夫が、ようやくメガホンをとったのは51歳のときでした。

 戦前の日本映画を代表する監督の一人に数えられる父をもつ伊丹十三さんは、父譲りの洒脱な作風で、早くからマルチな才能を開花させていました。デザイナーとして身を立て、ハリウッド映画に出演、ロケ道中を描いたエッセーが評判を呼び、ドキュメンタリー番組も手掛けました。すべては、映画監督になるための助走だったのでしょうか。1984年、「お葬式」で鮮烈な監督デビューを飾った後、「映画は、僕の全人生の『煮こごり』のようなもの」と語っています。

 真価が問われる3作目。地価高騰で地上げ屋が横行し、バブル到来が目前に迫っていました。そんな空気を察知したように、テーマは「お金」に決めていました。

 国税局査察部(マルサ)にねらいを定めたきっかけは、告発されたパチンコ店の実話です。摘発する側としのぎを削った末、査察官の一言で、社長がオチました。「もうやめにしようよ。あんた事業家としてダメになってしまう」。こんなせりふを吐ける人間なら、間違いなく魅力的な主人公になる、脱税する人間たちの修羅場から日本の断面図が描ける。そうひらめいた、のでした。

 

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