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2012年2月3日9時17分

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キレ物すご技

リズミカルなノコが生む細密な美 木曽のお六櫛

 

写真さまざまな種類のある「お六櫛」

写真ノコでくしをひく篠原武さん=長野県木祖村薮原の工房

 今から300年ほど前、江戸時代の享保年間。中山道の妻籠(つまご)宿に、お六という娘がいた。持病の頭痛を治したいと御岳山(おんたけさん)に願をかけると、「ミネバリの木でくしを作り、髪をすけ」とのお告げ。その通りにすると快癒した――。

 「木曽のお六櫛(ろくぐし)」の由来はこんな伝説にある。

 くしは近隣の特産品となり、昭和初めごろ、くし職人は数百人いたというが現在は4人ほど。木祖村薮原で「手挽(てびき)お六櫛工房」の看板をかかげる篠原武さん(69)は、2009年に厚労大臣から「現代の名工」の称号を受けた。

 ミネバリはその硬さゆえ「斧(おの)折れ樺(かんば)」とも呼ばれる。ちみつでなめらか、木くずはなめると苦く、殺菌作用があるともいう。

 8センチのくしに歯が95、6本並び、美術品のように細密な「梳(す)きぐし」作りを実演してもらった。自作のノコを材料の板に当て、「ゴリゴリ」と2往復すると歯ができる。わずかにずらしながらリズミカルに繰り返し、一気にひき終える。

 歯の先を1本ずつ研いでとがらせ、別のノコで根元を削る。表裏の両面から削ることで歯の根元が山状になり、枝毛や汚れがひっかかってとれる仕組みだ。

 「手でひいたくしは通りが違う。ミネバリのくしは静電気が起きないし、髪につやが出る」と篠原さん。

 二十年以上前の木曽路ブームでは、機械製の土産物がよく売れた。現在の販路は主に百貨店で、篠原さんは毎年、全国の店舗を回って実演販売をする。最高で1万6千円と高価だが、木のぬくもりが見直されていると感じる。「一つ一つにこめた思いをわかる人に買ってもらえれば」と語る。(安部美香子)

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